2015年

11月

03日

乱高下でも勝つ株・投信・為替:日経平均再び2万円台も 2015年11月3日特大号

 ◇日銀・政府の「秋の政策」で株価上昇の可能性


藤戸則弘

(三菱UFJモルガン・スタンレー証券投資情報部長)


 日本の景気に停滞感が強まっている。8月の鉱工業生産指数は前月比マイナス1・2%と事前予測を大きく下回った。これで7月のマイナス0・8%に続いて、2カ月連続の落ち込みである。内訳を見ても、出荷マイナス0・7%、在庫プラス0・2%と、予期せざる在庫が積み上がり、出荷が落ちる悪いパターンを描いている。7~9月期の生産は仮に9月が横ばいとしても、前期比で2四半期連続のマイナスの可能性が濃厚である。

 業種別に生産を見ると、機械、電機、輸送機械など主力産業の落ち込みが目立った。日本建設機械工業会によると、8月の輸出出荷額(前年比)はトラクターがマイナス55・0%、油圧ショベルもマイナス18・4%と落ち込んだ。中国の減速がコモディティー価格の急落を招き、ブラジル資源大手ヴァーレや豪英BHPビリトンといった鉱山メジャーは大きく設備投資を抑制。悪影響は日本だけではなく、世界に拡散している。

 また、自動車の国内販売が低迷したことも生産に響いた。主要乗用車8社によると、8月の国内生産は前年比マイナス4・9%で、14カ月連続の減少だ。期待された設備投資も、急速に陰りを帯びている。9月の工作機械受注は、外需が前年比マイナス28・6%と落ち込んだ。上海総合指数の暴落が始まった6月以降に、中国からの受注が急減しているところがポイントだ。中国発の景況感悪化が企業経営者のマインドを直撃し、春には4割増のペースだった内需もマイナス2・3%と27カ月ぶりに減少に転じている。


 ◇実質賃金は期待外れ


 一方、年初にあった「賃上げ=消費拡大」の楽観シナリオにも、陰りが差している。確かに、大都市圏の大企業は、賃金・賞与ともに増加傾向をたどった。しかし、地方や日本の大半を占める中小企業となると、十分な賃上げとは言い難い状況があった。それでも、名目賃金は上昇しているものの、物価上昇を含めた実質賃金は期待に程遠い状況だ。

 8月の実質賃金は、わずかプラス0・2%の小幅上昇にとどまっている。実態としては、辛うじて水面上に顔を出したところで、とても「賃上げによる個人消費の拡大」を標榜(ひょうぼう)できるものではない。最大の誤算は、食品を中心とした広範な製品で値上げが実施され、家計が「節約モード」に移行したことである。全世帯の消費支出は、6月、7月と前年比マイナスに沈んだ後、8月はプラス2・9%に浮上したが、天候要因に左右される不安定さを内包している。外需や生産面の落ち込みに比べて、内需が健闘しているのは事実だが、「個人消費主導の拡大」のためには、さらなる政策対応が必要と思われる。

 中国の減速を起点とした「負の連鎖」は、ボーダーレス化した経済では伝播(でんぱ)のスピードが異常に速い。年初から春の楽観論には、大きな修正が迫られていると見るべきであろう。

 今秋の政策対応としては、第一に日銀の追加緩和、第二に安倍政権の景気刺激策が想定されよう。

 市場では追加緩和策を待望する声が根強い。しかし日銀の金融政策は既に限界的な状況にある。国債市場では、日銀の保有額が膨張して流動性低下を指摘する声が多い。現状80兆円の長期国債買い入れ枠を更に拡大すれば、その弊害は一段と高まる。民間金融機関の国債保有が低下する中で、日銀の国債保有が膨張を続ければ、再び「財政ファイナンス」との批判を引き起こすかもしれない。

 一部では、金融機関が日銀に資金を預ける当座預金の金利(付利)引き下げといった案も浮上しているが、現行0・1%の付利をいくら操作したところで市場へのインパクトは小さく、実体経済への影響は不透明感が強い。あるいは、買い入れ対象国債のデュレーション(債券の平均回収期間)を長期化するとの考え方もある。しかし、「付利の引き下げ」と「デュレーションの長期化」だけの追加緩和となれば、いかにも線が細い。むしろ日銀の政策裁量余地の狭小さを暴露する側面もあろう。

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