2015年

11月

09日

エコノミストリポート:世界経済の新潮流 米金融緩和が作った「バブルリレー」2015年11月17日号

 日本経済と密接不可分なグローバル経済──。複雑に絡み合う日米欧の先進国と新興国経済、そして世界にあふれるグローバルマネーの動向をBNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストが解説する。


河野龍太郎(BNPパリバ証券チーフエコノミスト)


Q 米国の利上げ時期が迫り、国際金融市場が動揺している。

A 私は、今回の国際金融市場の動揺は2009年以降のグローバル経済の回復メカニズムが破綻したことの反映と考えている。従来のように、米国が利上げに踏み切ることができる状況まで回復したからといって、それが世界経済が好循環に入り回復ペースが今後、高まっていくことを意味するわけではない。反対に世界経済の勢いは低下する可能性が高い。

Q もう少し詳しい説明を。

A 08年のリーマン・ショックにさかのぼって考えよう。大規模な住宅バブルや住宅ローンの証券化商品のクレジット(信用)バブルが崩壊した後、米連邦準備制度理事会(FRB)が大規模な金融緩和に踏み切った。大型バブルが崩壊すると、金融機関や投資家は極端にリスク回避姿勢を強め、市場にマネーが枯渇する流動性危機が発生する。この流動性危機に対して、FRBによる流動性の大量供給は大きな意味を持つ。だが、内需を刺激する点からは、その効果は乏しい。もし回復メカニズムがあるならば、それは大規模な金融緩和が大幅なドル安をもたらし、輸出を刺激すると同時に株高による資産効果をもたらすことだ。

 ただし、基軸通貨国やそれに準ずる大国の中央銀行は、他国経済への影響が大きいため、大幅な通貨安をもたらすような大規模な金融緩和は実行しないという、ある種の紳士協定がそれまでは存在していた。

 しかし、FRBは崩壊したクレジット市場の補完を意図した信用緩和(credit easing)を含む08年11月以降の量的緩和第1弾(QE1)だけでなく、外需刺激のために大幅な長期金利の引き下げとそれに伴うドル安を狙った量的緩和第2弾(QE2、10年11月~11年6月)、量的緩和第3弾(QE3、12年9月~14年10月)を実行した。

Q その影響は?

A 想像以上だった。3度のQEが、単にドル安による輸出を刺激したからではない。FRBは公式には認めていないが、主たる効果は次のようなものだった。FRBの大規模金融緩和に伴うドル安に対し、自国通貨が大幅に上昇するのを避けるため、多くの新興国は対抗的に金融緩和を実施した。これが実体経済に比べて、極端に緩和的な金融環境を作り出した。もともとリーマン・ショック後、景気刺激のための拡張的な財政・金融政策を採用する新興国が多く、その効果がFRBの大規模な金融緩和によって、増幅されたのだ。

 これらの結果、09年半ばから好景気に沸く新興国、資源国を牽引(けんいん)役に、世界経済は回復を始めた。つまり、ドル安・自国通貨高に対抗するために、ドル買い・自国通貨売りの為替介入をした結果、外貨準備高が増えたのだ。米国は大規模な金融緩和を行い、新興国バブルを作り出すことによって外需を刺激し、住宅・クレジットバブル崩壊で低迷する内需を補い、立ち直っていったということだ。

 

 ◇中国の大誤算

 

Q 米国の利上げ問題だけが、国際金融市場の混乱の要因か。

A 世界で2番目の経済大国になった中国の構造問題も大きく影響している。まず近年、中国の高度成長が終焉(しゅうえん)し、トレンド成長率(潜在成長率)が大きく下方屈折したことだ。もう一つは、中国がいまだに事実上のドルペッグ制を続けていたことである。このことが、新興国や資源国の今回の調整プロセスを複雑かつ、困難にしている。………

この記事の掲載号

2015年11月17日号

 

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