2015年

11月

09日

景気回復のウソ:円安トレンドは終焉 来年には1ドル=100円台も 2015年11月17日号

 このところ、景気回復にもたつき感がある。だが、こうした日本経済の弱さが、円相場に与える影響は単純ではない。「日本の景気が後退するのだから円安」と言いたくなるところだが、それでは2013~14年の量的質的金融緩和を受けた好況期に円安となったのはなぜか、ということになる。

 例えば、13年1~9月までは3四半期連続で比較的高成長となり、この間の平均実質成長率は前期比年率3・4%増だった。この間のドル・円相場を見ると、13%以上も円安が進んでいる。高い実質経済成長率だからドル安・円高とは限らない。

 筆者は、アベノミクス、質的量的金融緩和下の過去3年間で進んだ円安トレンドは既に終焉(しゅうえん)したと見ている。アベノミクスがスタートした12年11月を起点にすると、円は名目実効レートベースで最大34%下落、対米ドルでは58%も下落した。もちろん、質的量的金融緩和が円相場に与えた影響はそれなりにあるが、3年間でこれだけ大幅な円安が進んだ最も重要な理由は、貿易収支の急激な悪化であったと考える。

 日本の貿易収支は11年に1980年以来31年ぶりとなる赤字に落ち込んだ。その後14年まで4年連続で赤字は増加基調をたどった(図)。貿易赤字急増の背景は、エネルギー価格の上昇による輸入増加と、アジア諸国からの輸入増加だ。一部で原発停止による原油輸入量の増加の可能性も指摘されたが、実はこの間の原油輸入量は減少している。一方、液化天然ガス(LNG)の輸入量は増加しており、これは原発停止による部分が大きいと考えられるが、LNG輸入量増加分の金額的な影響は1・3兆円程度しかない。つまり、エネルギー輸入増加分のほとんどが価格要因によるものと言える。

 また、アジアからの輸入増も顕著だ。14年のアジアからの輸入額は38・6兆円と、10年の27・5兆円から40%も増加している。恐らく製造業がアジア諸国へ生産移管を進めた結果、日本からの輸出が減り、アジアからの輸入が増えたのであろう。

 この結果、11年以降日本の経常黒字は急減し、昨年はついに2・6兆円にまで縮小した。アベノミクス、日銀による量的質的金融緩和が円相場を一定程度押し下げたのは事実だが、円安の本質的な理由は、貿易赤字の急拡大・経常黒字の急激な縮小であったと考えられる。

 それが、昨年後半からのエネルギー価格の急落で、輸入が急減し、今年は貿易収支が急激に改善している。この結果、今年1~8月の経常黒字額は11・6兆円と、既に昨年1年間の4・5倍に達している。前年同期の経常黒字は0・2兆円だから、前年同期比では58倍だ。JPモルガン・チェース銀行は今年通年の経常黒字は18兆円に達すると予想している。つまり、円相場を巡るファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は、過去3年間とは様変わりしてしまっているのである。………

この記事の掲載号

2015年11月17日号

 

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