2015年

11月

17日

経営者:編集長インタビュー 根岸秋男 明治安田生命保険社長 2015年11月17日号

 ◇アフターフォローにこだわり国内市場を開拓


 2015年度第1四半期(4~6月)は、売上高にあたる保険料等収入が前年同期比3・1%増の9719億円、本業のもうけを示す基礎利益が同6・8%増の1155億円と増収増益だった。通年度ベースで5年連続増益と過去最高益を実現した15年3月期の流れを引き継ぎ好調に推移している。

── 業績好調の理由は。

根岸 牽引役は、営業職員チャンネルです。営業職員を通じた保険料等収入は4~6月に前年同期比21・9%の大幅増でした。

 営業で大事なのは、顧客との関係をいかに築くか。保険に加入してもらって終わり、ではなく、その後のアフターフォローを続けながら、顧客との絆を強くし、顧客に合った商品をタイミングよく勧めることです。こうした営業手法と商品をうまく融合できていると感じています。

── どんな商品が人気ですか。

根岸 14年に発売した総合保障保険商品「ベストスタイル」は、加入後も生活スタイルやライフステージ、社会保障制度など、お客様のニーズや環境の変化に合わせて、死亡や医療、介護といった保障内容を、柔軟・自在に見直しできる点が特徴です。顧客とは加入後も30年、40年と生涯のお付き合いが続きますから、アフターフォローにこだわる姿勢を明確にしました。

── 営業手法も変えましたか。

根岸 今まではこちらからお客様に働きかける「プッシュ型」の営業が中心でしたが、それに加え、相続や介護などをテーマとするセミナーを開き、お客様に足を運んでもらう「プル型」の営業を増やしています。

 営業職員に対する研修も、以前に比べ変わっています。現在は、インターネットを使った双方向型の講習を通じて職員や研修担当者の営業力の底上げを図っています。職員には、これをベースに、それぞれの個性を上乗せしてもらっています。現場でのノウハウや経験をネットやビデオを使って共有できる仕掛けも用意しています。

── 最近では販売チャンネルとして銀行など金融機関の存在感が高まっています。

根岸 銀行の販売力は確かに強いと感じています。そのため、銀行窓販にも力を入れますが、当社にとって基幹となるのはやはり、営業職員です。専属の営業職員は全国約1000拠点に計約3万人がいますが、これからも増やしていく方針です。

── 少子高齢化に伴い国内市場が縮小する見込みです。

根岸 確かに、人口は減少するでしょう。それでも、高齢者の増加や女性の社会進出の進展などにより、今まで市場として見ていなかったニーズが出てくるはずです。市場の大きさは人口の増減だけで決まるものではありません。社会保障を補完する役割として、国内市場にも成長の余地はまだあると考えています。

 そうした中、当社は、お客様をはじめ、経営資源である従業員、お客様や従業員の暮らす地域や社会、そして会社のすべてがよくなるような「四方よし」の経営を目指していきたいと思います。


 ◇買収額以上の価値


── 一方で、7月には米中堅生保のスタンコープ・ファイナンシャル・グループを買収しました。

根岸 買収先としてスタンコープ社を選ぶまでには、調査・研究に2年ほど費やしました。外部から紹介されたわけではなく、自ら汗をかいて自分たちに合った会社を選んだのです。買収額は確かに高額かもしれませんが、株式を売り抜けるためではなく、持ち続ける前提でこちら側から求愛したものです。むしろ買収額以上の価値があると考えています。

── 海外戦略は。

根岸 当社にとって海外事業は、あくまで補完的な位置付けです。14~16年度が対象の現行の中期経営計画の前提となる長期計画で、海外事業を通じて得られる収益を今後10年で全社収益の10%に高める目標を掲げています。スタンコープ買収で次期中期経営計画期間中にもこの目標近くに到達できる見通しです。

 すでに中国、インドネシア、タイ、ポーランド、米国の5カ国に事業展開しており、アジア、米国、欧州、日本の4極体制で事業調査・検討を続けています。北米地域は比較的短期に収益への貢献が期待できる一方、アジア地域は20~30年後に花開けばよいと考えています。

── 日本生命が三井生命を買収しましたが、国内のM&Aも考えていますか。

根岸 選択肢として排除していませんが、国内生保の再編はそれほど簡単なものではありません。

── 機関投資家として足元の市場環境をどう考えていますか。

根岸 異常な低金利状態が続いています。国債中心の今まで通りの運用を続けていれば、金利収入が低水準にとどまり、ボディーブローのようにダメージとして効いてくるでしょう。そのため、海外での運用強化が課題です。9月に英資産運用会社リーガル・アンド・ゼネラル・インベストメント・マネジメントと業務提携したのは、外債運用体制を強化する一環です。

 近い将来、金利が上昇する局面に備え、今後は環境の変化に応じて機動的に運用資産を組み替える運用力やリスク管理能力が求められることになるでしょう。


(Interview 金山隆一・本誌編集長、構成=池田正史・編集部)


 ◇横顔


Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 保険数理人(アクチュアリー)から志願して営業現場に移り、いろいろなことに果敢に挑戦していました。今の自分があるのも、この頃のおかげです。

Q 最近買ったもの

A 特にありません。ただ、カフスボタンは40組前後持っています。

Q 休日の過ごし方

A 平日は人と会うことで時間がすぎてしまいますから、仕事のことをじっくりと考える時間にあてています。2週間に1度は犬の散歩をします。


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■人物略歴

 ◇ねぎし あきお

埼玉県出身。埼玉県立川越高等学校卒業。1981年3月に早稲田大学理工学部を卒業し、同4月に明治生命保険入社。2005年4月に企画部長、09年7月に執行役営業企画部長、12年4月に常務執行役などを経て13年7月より現職。57歳。

この記事の掲載号

2015年11月17日号

 

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