2015年

11月

10日

受け継がれる名店の情熱 この一杯に人生をかける

銀座のカフェ・ド・ランブル
銀座のカフェ・ド・ランブル


◇知って驚くコーヒー革命


 コーヒーの自家焙煎(ばいせん)の世界で「御三家」と呼ばれたのは、いずれも東京の3店──銀座のカフェ・ド・ランブル、南千住のカフェ・バッハ、吉祥寺のもかである。

 ランブルの店主・関口一郎氏は1914年生まれで斯界(しかい)の大長老。生豆を10年以上寝かせた「オールドコーヒー」を売り物にしている。作家の永井荷風や小島政二郎もこの店を訪れたという。

 バッハの店主・田口護(まもる)氏は、日本で自家焙煎コーヒーを定着させた功労者の一人。看板の「バッハブレンド」は2000年の九州・沖縄サミットの夕食会で提供され、コーヒー嫌いで知られるクリントン元米大統領がおかわりしたという。田口氏は日本スペシャルティコーヒー協会会長も務め、スペシャルティの普及にも貢献。理論派として知られ、自家焙煎店を目指す人の教本を執筆している。人材育成に熱心で、同店から独立、あるいは開業支援を受けた店は約150店に上る。

 もかの店主・標(しめぎ)交紀(ゆきとし)氏は「コーヒーバカ」と呼ばれるほどコーヒーにのめり込んだ人。『喫茶店経営』元編集長でフリージャーナリストの嶋中労氏は『コーヒーの鬼がゆく』の中で、「コーヒーを飲み残す客がいると、心悸(しんき)が高ぶり、しまいには神経衰弱になった」とその仕事ぶりを紹介している。標氏は07年に死去したが、コーヒーに対する情熱は慕う人たちによって受け継がれている。

 作家の向田邦子が通い、ブルーボトルコーヒー創業者ももてなしに感銘を受けたという東京・青山の名店大坊(だいぼう)珈琲店は13年に閉店したが、同店の出身者が恵比寿に店を開いた。

南千住のカフェ・バッハ
南千住のカフェ・バッハ

 一方、近年はスペシャルティコーヒーを提供する店の元気ぶりが目立つ。例えば、堀口珈琲丸山珈琲ハニー珈琲などは、豆の仕入れや販売・卸にも力を入れ、各地にその豆を使う店がある。また、セミナーや勉強会を開くなどして人材育成、情報交換を行い、ゆるやかなグループを形成しているところもある。

 老舗が多い京都では、池波正太郎や黒沢明などに愛されたイノダコーヒが有名。小川珈琲も街角でよく見かける。

 スペシャルティだけでなく、伝統的な深煎りの濃い味や、豆を定温定湿熟成させてまろやかな甘さを追求するコーヒーの店もある。

 カフェの店主は、独立すれば皆一国一城の主で、自分の味を求めるものだ。全国には自家焙煎で独自の世界を追求する店が多数あり、ここで紹介したのはほんの一部。先人の思いを受け継ぎながら、日本のコーヒー文化は進化し続ける。(編集部)

関連記事

この記事の掲載号

【特集】緩和中毒

 ECB FRB 日銀 中国人民銀

 世界4極 大緩和ドミノ

 

【特集2】知って驚く コーヒー革命

 勢力図画一変/名店の系譜

 

 発売日:2015年11月2日 定価:620円

 

 ■目次を見る

 ■ネット書店で購入する

 ■年間定期購読