2015年

11月

10日

温故知新のコーヒー文化 「師匠の奥義」から客観性備え

店内に焙煎機を置き、特徴のある豆を並べる(東京・神田のグリッチでオーナーの鈴木清和さん)
店内に焙煎機を置き、特徴のある豆を並べる(東京・神田のグリッチでオーナーの鈴木清和さん)

 ◇知って驚くコーヒー革命

 ◇2015年11月10日号


川口葉子(ライター)


 東京・神田に今年4月に誕生した「GLITCH COFFEE&ROASTERS」(グリッチ)は、歴史ある街に新しいコーヒー文化を伝える小さなロースタリー&カフェ、つまり焙煎(ばいせん)所兼カフェだ。

 扱うのは高品質なスペシャルティコーヒー。「コーヒー」と注文すると、「今日はこの3種類の豆がありますが、どれにしましょう?」と尋ねられる。カウンターには「エチオピア ゲデブ ナチュラル」などとコーヒー豆の銘柄が書かれたラベルが並んでいる。これはエチオピアのゲデブ区域で栽培され、収穫後、水洗いをせずに乾燥させる「ナチュラル方式」と呼ばれる生産処理を経た豆のことだ。複数の産地の豆を混ぜ合わせた「ブレンド」に対し、このように単一の地域で栽培され、品種や生産処理方法が明らかな豆は「シングル・オリジン」と呼ばれる。

 銘柄の下には味の特徴が小さく記されている。「ストロベリー、グレープ、スウィート、ラウンドマウスフィール」。イチゴやブドウを連想させる風味があり、甘く、柔らかな質感をもつという意味である。

 飲み慣れない人がラベルから味を想像することは難しいだろう。オーナーの鈴木清和さんもそれを承知していて、お客に「味のお好みはありますか?」と声をかけ、スムーズに選べるようアドバイスする。

 同じ豆でも深煎りにすれば苦味が強まり、浅煎りにすれば酸味が際立つ。鈴木さんは産地ごとに異なる豆の個性を最大限に生かすために浅めに焙煎することが多い。


 ◇カフェの主役に


 ここ数年来、東京を中心にグリッチのような小規模のロースタリー&カフェが増えている。従来のカフェの主役は空間と食であり、必ずしもコーヒーの味ではなかった。人々が求めたのは洗練された居心地のよい空間と、料理やスイーツの充実である。そこへコーヒーの味そのものに焦点を当てた店が出現し始めたのには、どんな背景があったのだろう。

 キーワードは、米国で起きた新しいコーヒーのブーム「サードウエーブ」だ。高品質で個性豊かなコーヒーを求める動きである。その一翼を担う存在として日本に紹介されたのがカリフォルニアに本社を構える「ブルーボトルコーヒー」。今年2月、清澄白河(東京都江東区)にオープンした日本上陸1号店には長い待ち行列ができた。

 コーヒーは作り置きせず、カウンターでお客の注文を受けるごとにバリスタ(コーヒーをいれる人)たちが1杯ずつコーヒーをハンドドリップ、つまりマシンを使わず人の手でポットからドリッパー(コーヒーの抽出器具)に細く湯を落としていれる。「これぞサードウエーブのスタイル」と各メディアが報じた。

 とはいえ、....

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