2015年

11月

24日

ワシントンDC 2015年11月24日特大号

本命候補ジェブ・ブッシュ氏は苦戦 Bloomberg
本命候補ジェブ・ブッシュ氏は苦戦 Bloomberg

 ◇共和党の指名争い
 ◇支持者の政治家不信が翻弄


 今村 卓

 (丸紅米国会社ワシントン事務所長)

 

 来年の大統領選に向けた共和党の指名争いは、本命とみられていたジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事の支持率が、11月に入り4%に沈む予想外の展開になっている。

 ブッシュ氏が窮地に陥っている最大の理由は、共和党支持者の政治家不信の強さだ。「大統領候補にとって何が重要か」を尋ねた最近の世論調査で、共和党支持者の65%が「新しい考え」と回答。「経験と実績」を挙げた支持者は29%にとどまる。民主党支持者の、それぞれ42%と50%という回答との違いは鮮明だ。

 別の調査では、共和党支持者の74%が「現在のワシントンの政治が機能していない」と答え、70%が「その責任は議会共和党にもある」と答えている。「責任はオバマ大統領と民主党にあり」との回答が90%とはるかに多いが、議会の上下両院を制している共和党の機能不全も認めて、失望しているのである。しかも、共和党支持者のフォーカスグループ・ディスカッション(明確に定義された母集団から少数の対象者を集めて行うディスカッション)では、共和党が反対する政策を数多く実現するオバマ政権以上に、それを阻止できない共和党の指導部と議員への不満が、より強く表れるという。

 共和党支持者の不満には、ないものねだりの面もある。共和党は、議会を制して立法権を押さえているが、行政権は民主党のオバマ政権が押さえ、オバマ大統領には拒否権もある。議会内部でも、上院では、民主党が議事妨害の可能な議席数を確保している。こうした制約の下では、議会共和党にできることに限界がある。統治の実績を重ねていくには、オバマ政権と交渉し、必要な譲歩をして、合意するしかない。

 しかし、この当たり前の政治プロセスを、共和党支持者は「議会共和党の裏切り」と非難し、妥協を重ねる共和党議員は「ワシントンの政治の悪癖に染まった」と失望する。そうした不信の対象は、上下両院の議員にとどまらず、州知事など政治家全般に広がっているのだ。そして、この共和党支持者の強い政治家不信の裏返しが、政治家ではない不動産王トランプ氏と元神経外科医のカーソン氏が2割台の支持率で首位を争う、現在の指名争いなのである。

 最初の予備選まで3カ月を切った時点で、共和党支持者の政治家不信が、指名争いに強く影響している。この異常な事態は、ブッシュ氏だけでなく、他の政治家の候補者、党を統率する共和党全国委員会や過去の指名争いで影響力を発揮してきた大口献金者にとっても大誤算だろう。


 ◇実績が武器にならない


 十数人の候補者が出そろった指名争いの序盤戦では、統治の経験と実績を積んだ多くの州知事出身の候補が競い合い、上院議員1期しか経験せずに就任したオバマ大統領との違いを有権者に示すことが、共和党の本選挙までのプランだったはずだ。しかし、共和党支持者が経験を積んだ政治家を嫌い、非政治家に活路を求めたため、州知事出身候補はブッシュ氏以下、全員が苦戦している。

 共和党内には、過去の大統領選と同様に、予備選が近づけば「民主党の指名が確実なヒラリー・クリントン前国務長官に勝てる候補」という現実的な志向に、有権者の意識が切り替わっていき、政治家の候補に支持が移っていくという期待はある。

 一方、現時点でこれほど「反政治家」の意識が強ければ、序盤戦のアイオワ州やニューハンプシャー州でトランプ氏かカーソン氏が勝ち、その後が異例の展開になっていく、との声も党関係者から出始めている。その意味でも、今後の世論調査や討論会、各候補の選挙戦の行方が日ごとに注目される。(了)

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2015年11月24日特大号

 

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