2015年

11月

24日

経営者:編集長インタビュー 国分文也 丸紅社長 2015年11月24日特大号

 ◇電力で商社の総合力発揮



 総合商社の丸紅は、2016年3月期決算で連結純利益が前期比70%増の1800億円になると見込む。資源安が響くものの、得意な電力に加え、食料や輸送機などの事業の伸びが増益に寄与する。


── 資源安にどう対応しますか。

国分 資源投資は、2~3年の短期で行うにはリスクが高いので、良い案件と悪い案件を見極め、長期的な視野で行うべきだと考えています。10 年か15年か分かりませんが、ある程度の周期で(好不況の)波が来ます。一方で、日本は資源が乏しい。そのため、商社が資源に投資していく意味はあると思います。今は、資産を見直して、コストを下げる時期。競争力のない資産は、入れ替えていきます。

── 豪州のロイヒル鉄鉱山開発事業の状況は。

国分 ほぼ完成しました。生産も順調に進むと思います。フル操業の開始は18年の予定で、ピークには5500万㌧を生産する予定です。一番の問題は価格。鉄鉱石は現在の1㌧当たり53㌦前後が続けば、採算がとれます。このプロジェクトには18億豪㌦(現在のレートで約1500億円)を投じました。最も良いのは、18年のフル操業時に、鉄鉱石が70~80㌦まで戻ることですが、資源価格は簡単には回復しないでしょう。

── 買収した米国の穀物メジャーのガビロンは、買収のれんで前期に約430億円(税後)の減損損失を出しました。

国分 ガビロンは、いろいろな会社を買収してきたので、各事業のオペレーションが独立している面があります。現在、そうした非効率的な点を細かく分析し、彼ら自身でコスト競争力を高められるよう作業しています。この作業をしっかりやれば、非常に良いアセットを買ったと言える自信があります。買収から丸2年。これからが勝負です。


 ◇挑戦しがいのある時期


── 営業キャッシュフローやEBITDA(税引き前利益に特別損失、支払利息、減価償却費を加算した値)では、上位商社との間に大きな差があります。

国分 違いは、体力やファンダメンタルズ(基礎的条件)だと思います。当社は特に財務体質が大きな課題。今年からキャッシュフローを重視しています。

 資源安もあって、これからの10年間のビジネス環境は、今までの10年間と違います。今までは、さほど労せずにお金が入り、それを成長投資に回し、新興国経済も右肩上がり、という方程式でしたが、今後はさまざまな不確定要素が出てきます。新興国がこれまでと同じスピードで伸びるとは思えないし、米国は利上げする。そうした中で10年、20年とやっていくには、成長して、PL(損益計算書)、BS(貸借対照表)、キャッシュフローの規模や質を上げていくことが大事です。

── 2000年代初頭には、株価が50円台をつけたこともありました。

国分 今の中堅社員は、資源バブルによる右肩上がりの10年超を経験しているので、この環境が当たり前だと思わないよう戒めています。そう考えると、今は逆に良い環境で、挑戦しがいのある時期だと思います。


 丸紅は今年8月末に楽天と電力の小売り事業で業務提携すると発表。来年4月からインターネット通販「楽天市場」に出店する中小事業者などに対し、丸紅が調達した電力を販売する。


── 一方、電力事業などでは着実に収益をあげています。

国分 電力は、プラントのEPC(設計・調達・建設)からIPP(独立系発電事業)へとシフトしてきました。現在の持ち分発電容量は約1万1000メガ㍗で商社最大です。

── 国内の電力事業には、どう取り組みますか。

国分 大きなチャンスだし、一気に進めたいのですが、日本のエネルギーのベストミックス(火力・水力・原子力などの発電方式の最適な組み合わせ)を見極められないのが一番の懸念です。原発がいつ、何基、どこまで動くか分からない。電力自由化のなかで、電源をどれだけ新設して持つべきかも、いまいち見えてきません。そのため国内では、いろいろな会社と提携して、どんどん発電所を新設することは、あまり考えていません。

── 今後、強化したい分野は?

国分 一つは農業資材。子会社で、農業資材などを販売する米ヘレナケミカル社は、米国の農薬肥料業界で圧倒的な存在感があります。同社のビジネスモデルを、どう展開するか。東南アジアや、少し先かもしれませんが南アフリカも候補です。

 輸送機も収益が伸びています。例えば、長期優先契約が付いた液化天然ガス(LNG)船や、航空機のリース、自動車などの事業を、新興国をベースに伸ばしていきたいです。 これから世界的に機会が増えるのは、天然ガスの扱いです。当社はガスのバリューチェーン(LNG船の受け入れターミナルやパイプラインの建設、LNG船の保有・運航事業、IPPなど)で案外強い。ガスを供給する際、受け入れはどうするかなど、いろいろな問題があるなかで、総合的に対応できるので、チャンスがあると見ています。

 

(Interview 金山隆一・本誌編集長、構成=中川美帆・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 米国でトレーダーとして石油を売買していました。34歳の時に石油トレーディングの会社を設立しましたが、1992年に大損。結局、清算して帰国しました。米国での最後の1年間は地獄のようでしたが、良い経験になりました。もし、うまくいって成功体験を引きずっていたら、今の自分はないでしょう。

Q 最近買ったもの

A 本、靴、服。本は何でも読みます。

Q 休日の過ごし方

A 何も予定のない日は、トレーナーに家へ来てもらい、1時間半のトレーニングをしています。

 

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■人物略歴

 ◇こくぶ ふみや


東京都出身。1971年麻布高校卒業。75年慶応義塾大学経済学部卒業、丸紅入社。石油、エネルギー部門を中心に歩む。2008年常務執行役員などを経て、13年4月から現職。63歳。

この記事の掲載号

2015年11月24日特大号

 

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