2015年

12月

01日

相続増税の新常識:「タワーマンション節税」の転機 2015年12月1日号

◇時価との大幅乖離に課税強化へ

 

高田吉孝

(青山財産ネットワークス 財産コンサルティング事業本部副本部長)

 

 タワーマンションを活用した相続税の節税対策が曲がり角を迎えている。資産の相続税評価額を圧縮できるとあって、富裕層を中心に活用されてきたが、時価とのあまりに大幅な乖離(かいり)を国税庁が問題視。行き過ぎたタワーマンション節税は今後、厳しく評価されることになりそうだ。また、相続税対策もあってタワーマンション価格は近年、大幅に上昇しており、経済状況によっては価格下落リスクも高まってくる。安易な節税目的のタワーマンション購入は禁物だ。

 タワーマンション節税について国税当局側の問題意識が明らかになったきっかけは、10月27日の政府税制調査会だった。委員の一人が「タワーマンションを使った節税策が喧伝(けんでん)されているが、資産家しか使えない方法で時価と(相続税)評価額との差が大き過ぎるものについては見直しをしてほしい」と発言し、財務省主税局は「国税庁と情報を共有し、適切に対応していきたい」と回答。その後、国税庁がすでに今年9月、全国の国税局に対し、厳正に評価するよう指示していたことが報じられた。


◇土地の持ち分小さく

 そもそもなぜ、タワーマンションは時価と相続税評価額の乖離が大きくなるのか。相続税の評価上、土地は公示地価に対して8割を目安に設定される「路線価」をもとに評価するため、同額の現金に比べて評価額はもともと低い。また、マンションの場合は各戸の区分所有面積に応じて土地の持ち分が決まるが、タワーマンションは土地面積に対して戸数が多いため、土地の持ち分はそれだけ下がることになる。
 さらに、建物は固定資産税評価額で評価するが、同じマンションなら区分所有面積によって評価額が決まり、階数などには関係がない。しかし、タワーマンションは一般的に上層階ほど価格が高いため、それだけ時価との乖離が大きくなる。こうした効果が働くことで、時価1億2000万円のタワーマンションを所有した場合で試算すると、相続税評価額は4000万円と約3分の1にまで圧縮された(表1)。
 評価額の圧縮効果が、相続税額に与える影響は大きい。仮に、このタワーマンションを所有していた被相続人にかかる相続税率が40%だとすると、1億2000万円の現金を相続した時の相続税額は4800万円(=1億2000万円×40%)なのに対し、タワーマンションでは1600万円(=4000万円×40%)と、大幅な節税が可能になる。加えて、購入したマンションを賃貸すると、建物は相続税評価額に対して30%の評価減(借家評価)、土地は地域によって異なるがおおむね20%前後の評価減(貸家建付地評価)と、評価はさらに圧縮される。………

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この号の掲載号

週刊エコノミスト 2015年12月1日号


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