2015年

12月

01日

緊急特集:パリ同時多発テロ ECB追加緩和の可能性高まる 2015年12月1日号

◇観光、消費減退で欧州経済に打撃

 

山口曜一郎

(三井住友銀行ヘッド・オブ・リサーチ)

 

 仏パリで11月13日、同時多発テロが発生した。129人(19日時点)の犠牲者が出ているが、パリ市民は毅然(きぜん)とした態度を取っている。テロ発生の翌日以降も外に出て、普段と同じ生活を続けようとしており、「テロには屈しない」という姿勢を示している。筆者は、2001年9月のニューヨーク、05年7月のロンドンの両方で同時多発テロを経験したが、いずれの際も市民のテロには屈しないという思いを強く感じた。

 金融市場を見ても、フランスの指標株価指数であるCAC40指数こそ週明けの11月16日に前週末終値比マイナス0・08%となったものの、17日には大幅反発、ユーロ・ストックス指数は前日比プラスを続けており、テロによる影響は限定的となっている。

 とはいえ、その影響がフランスならびにユーロ圏の経済活動に与える可能性は無視できない。危惧されるのは旅行・観光業へのインパクトだ。世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)の14年調査によれば、フランスにおける旅行・観光業の経済への直接的な貢献度は771億ユーロと国内総生産(GDP)の3・6%にのぼり、間接的な支出、投資、雇用の影響を含めると、寄与度は1914億ユーロ、GDPの8・9%に達する。この金額は世界184カ国中6位であり、テロの影響から旅行者や観光客が急減するようだと、同国経済に大きな打撃を与えることになる。また、国内の消費行動にも影響が出てくる恐れがある。前述のように、人々は普段と変わらない生活を送ろうとしているが、繁華街への外出を控えたり、警備上の問題から移動が制限されたりすることで、消費は幾分抑制的になる可能性がある。
 フランスは内需主導型の経済であり、家計消費の動きは非常に重要だ。第3四半期のGDPは前期比プラス0・3%と2四半期ぶりのプラス成長となったが、うち家計消費の伸びの寄与度は0・2%ポイントで全体の6割を占めている。テロに対する不安心理が消費を冷やすようなことがあれば、経済活動が減速するリスクが出てくるだろう。……

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この号の掲載号

週刊エコノミスト 2015年12月1日号


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