2015年

12月

08日

【特集:そうだったのか!TPP】どうなった!?重要5品目 

三輪泰史

(日本総合研究所創発戦略センターシニアスペシャリスト)


 

 安価な輸入農産物が押し寄せることによる日本農業への悪影響が懸念されてきたが、大筋合意の内容を見ると、多くの品目で例外的な取り扱いを確保できている。多国が参加する貿易自由化の枠組みにおける交渉としては、ある程度良い条件を勝ち取ったと評価できる。

 ただ、農業者の間では賛否が分かれている。一部品目についてはTPPによって安い輸入品が流入する可能性があるためだ。食料自給率の維持と農業者保護の観点から関税維持の対象とされた、コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の「重要5品目」についても、一部で関税引き下げや輸入枠の拡大に応じている。


(1)コメ

 主食用のコメは、現状の高水準の関税(1キロ当たり341円)が維持され、安価な外国産米が大量に押し寄せるという事態は回避された。

 ただし、米国から年間7万トン、オーストラリアから年間8400トンの輸入枠(輸入義務はなし)が新たに設定されている。輸入増によりコメの供給過剰に拍車がかかり、国産米の価格が下落する可能性が指摘されたが、国は備蓄用米の買い入れ量を増やすことで輸入増加分を市場から隔離する方策を打ち出した。米価への大きな影響は避けられる見込みだ。

 他方で、コスト削減を期待していた外食チェーンなどの需要家にとっては、さほどメリットのない合意内容となった。


(2)麦

 小麦・大麦については、国が一元的に輸入する国家貿易制度は変わらず、関税も維持された。一方で、事実上の関税であるマークアップ(政府が輸入する際に徴収している差益)については9年目までに45%削減することになった。

 マークアップが削減される分、輸入品の価格が低下する。消費者にとってはパンなどの小麦加工品が安くなるメリットが期待される。一方で、国内の麦農家は、うどんやラーメンなどに適した品種の栽培、地産地消の推進など、輸入品との差別化がこれまで以上に求められる。


 ◇「国産牛」に打撃


(3)牛肉・豚肉

 牛肉の関税は現行の38・5%から初めに27・5%に引き下げられ、さらに16年目には9%となる。

 牛肉は、3カ月以上日本で飼育された牛を「国産牛」と呼び、中でも日本固有の4品種は「和牛」と分類されている。当然、和牛の方が価格が高い。輸入牛と品質や用途が大きく異なる和牛については関税引き下げの影響は軽微だ。だが、競合関係にある国産牛(交雑牛、オスの乳牛など)は……