2015年

12月

08日

【特集:そうだったのか!TPP】NAFTA、米韓FTAから読む米国の本音

青木 大樹
(UBS証券シニアエコノミスト)

 政府が11月5日に公表した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の全文は、概要だけで全30章、97㌻にわたる。膨大な上、具体的な記載がない分野も多く、条文のみから日本経済への影響を読み解くことは難しい。

 TPPの日本経済への影響を見極めるには、最も主導的な役割を果たすとみられる米国の真の狙いを知る必要がある。北米自由貿易協定(NAFTA、1994年発効)や米豪FTA(2005年発効)、米韓FTA(12年発効)で米国が何を行ったのかを振り返ることが役立つ。


◇医薬品・医療機器

 自由貿易・投資協定において、米国が関税以外の分野で力を入れてきたのは、米国が非常に高い国際競争力を持つ医薬品・医療機器だ。
 米韓FTAの条文では医薬品・医療機器について一つの章を設けて定めている。同FTAに基づいて、米国の医薬品・医療機器の輸出を促す委員会や、公的機関の定めた薬価に対して医薬品企業から異議申し立てできる委員会が設置された。実際に、委員会を通じて韓国では医薬品価格の引き上げが図られている。
 NAFTAでは医薬品・医療機器に関する章はないが、知的財産権や貿易上の技術的障害に関する項目の中で医薬品や医療機器の扱いを定めている。それらの条項をテコにして、米国はとりわけカナダへの化学品や医薬品分野の輸出を拡大した。
 TPPはNAFTAのパターンに近い。条文には医薬品・医療機器の分野について独立した章はないが、8章「貿易の技術的障害」と26章「透明性及び腐敗行為の防止」において、それぞれ附属書で医薬品及び医療機器に対する承認手続きの透明性確保を明確に規定している。
 医療機器や医薬品を日本国内で販売するには、厚生労働省の承認が必要になる。TPPはいわば承認プロセスや基準の透明性を高め、国際基準に合わせることを求めている。医薬品の価格など日本独自の基準を変更する必要に迫られる可能性がある。 ………

この記事の掲載号

週刊エコノミスト 2015年12月8日号 表紙 TPP

週刊エコノミスト 2015年12月8日号


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