2015年

12月

08日

経営者:編集長インタビュー 森澤 紳勝 日本トリム社長 2015年12月8日特大号

◇日本の技術を世界に発信したい


 1982年に整水器の開発・販売を主な事業に創業、現在では整水器業界首位の日本トリム。電解水素水の整水器販売が好調で、2016年3月期の業績は過去最高の151億円に達する見通しだ。


── 電解水素水とは何ですか。

森澤 水を電気分解した非常に細かい粒子のアルカリ性還元水です。体内への吸収力が高く、胃腸症状の改善や、老化の原因である活性酸素を取り除き、老いを防ぐ効果が期待できます。

── 他社との違いは何ですか。

森澤 常に安定した品質の電解水素水を作り出す技術を持っていることです。当社の整水器には「ダブル・オートチェンジ・クロスライン方式」という技術が使われており、これは陰極と陽極の極性を定期的に切り替えることで、水に含まれるマグネシウムなどが電極板に付着するのを防ぎ、常に安定した水素水を作り出す技術です。医療分野での使用には常に安定した品質が求められるため当社の強みとなっています。また研究や実験をしっかり行い、多くの科学的根拠を示せることは、他社との大きな違いです。

── 電解水素水事業の取り組みは。

森澤 主力の整水器の開発・販売に加え、「還元野菜整水器」(家庭用整水器の技術を応用し、農業用に製品化した整水器)を農家に販売しています。普通の水で栽培するより収穫量が多く、抗酸化成分が多く含まれた栄養価の高い野菜が育ちます。他にも、電解水素水を使用した「電解水透析」という新しい透析方法を医療機関に提案しています。電解水素水を基本に、医療や農業などさまざまな事業展開を行っています。


◇医療分野も柱に


── その他の医療分野への取り組みは。

森澤 一つ目は米国での遺伝子診断事業です。主に遺伝子診断キットの開発・販売を行っています。二つ目はへその緒の中に含まれている血液である臍帯血を保管する事業です。白血病など将来の難病リスクに備えて、新生児の臍帯血を抽出し、保管しています。国内最大の私的臍帯血バンクとして、今後積極的に事業展開していく予定です。

── それぞれの事業の強みは。

森澤 透析事業の「電解水透析」は通常の透析と比べて患者さんの倦怠感が軽減されるうえ、投薬量の削減も期待でき、需要が高まっています。既に13病院で導入され、更に現在30病院ほどの受注を獲得しています。

 遺伝子診断事業は、20年前に米ジョンズ・ホプキンス大学の医師と共同で始めた事業です。この遺伝子診断キットは主に抗がん剤治療に役立てるのが目的で、自分に合った抗がん剤を事前に調べ、治療におけるさまざまな負担を軽減することを目指しています。

 抗がん剤の効き目は体質によりさまざまで、同じ抗がん剤でもその効果は個人差があり、効果が薄いのに副作用に苦しむ患者が多くいます。事前に自分の体質に合った、効果の期待できる抗がん剤がわかれば、薬の過剰投与や、治療の長期化、医療費の高額化などを防ぎ、副作用も最小限に抑えることができます。来年には新たに最新型の遺伝子診断キットを米国で発売する予定です。今後は国内でも認可を取り、積極的に展開していきます。

── 臍帯血の保管事業はどうですか。

森澤 生まれた時に自分の臍帯血を保管しておけば、自分の幹細胞で治療できるため副作用の心配がほとんどありません。疾病次第では、二親等まで使用可能という大きな利点もあります。

 国内の臍帯血保管率は14年度で出生数約100万人に対し0・3%、当社の実績は15年11月現在で3万6000件以上です。米国の臍帯血保管率は13年8月時点で出生数約380万人に対し7%まで普及しているので、市場規模は今後拡大していくと考えています。そうした将来を見据え、今後はⅰPSなどの再生医療との連携も視野に入れ取り組んでいきます。

 また現在、これらの医療分野を新たな事業の柱とするため、遺伝子診断事業と臍帯血保管事業を統合したトリムメディカルホールディングス(HD)の上場も目指し、準備を進めています。


◇5年で売上高500億円


── 米国以外の海外展開は。

森澤 インドネシアで、電解水素水のボトル販売を展開しています。インドネシア大手財閥のシナルマス社と共同で、25年までに市場シェアの30%を獲得し、現在の売上高3億〜4億円から、10年後には400億円の達成を目標としています。 また中国・広州に拠点を置く連結グループ会社も、家庭用整水器の普及に向けて動いています。整水器販売は、今後米国、欧州にも展開していく予定です。他にも、日本の医療技術を中国に導入するため、透析・糖尿病専門の病院を作る準備を進めています。

── 今後の目標は。

森澤 経営陣の若返りを図り、後継者の育成に力を入れながら、5年後には売上高500億円、10年後には1000億円の達成を目標にしています。日本発の整水技術で新しいことを生み出し、世界へ発信していきたいです。

(Interviewer 金山 隆一(本誌編集長)、構成=荒木宏香・編集部)

 

横 顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 健康機器メーカーで働き、37歳で起業しましたが、ひたすら仕事をしていた30代でした。

Q 最近買ったもの

A 物にはあまり執着がありませんが、冬と夏に2着ずつスーツを購入することにしています。

Q 休日の過ごし方

A 一日のんびりしたり、散歩したりして過ごしています。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

■人物略歴

高知県出身。清水高校卒業。1968年東海大学文学部卒業、健康関連機器製造販売会社を経て、82年に日本トリムを設立。71歳。

この記事の掲載号

週刊エコノミスト 2015年12月8日号 表紙 TPP

週刊エコノミスト 2015年12月8日号


【特集】そうだったのか!TPP

期待外れの政治ショー

いまさら聞けないTPPのキホン

こう変わる日本の産業

保存版 関税一覧

米国で高まる「反TPP」感情