2015年

12月

15日

エコノミストリポート:「長期停滞」にはまり込んだ日本経済

 ◇物価目標なぜ2%

 ◇2015年12月15日号


人口減少を背景にした自然利子率のマイナス化など不況の根が深そうだ。Q&Aで解説する。


左三川郁子

(日本経済研究センター主任研究員)


Q1 日本銀行は10月30日に公表した「展望リポート(経済・物価情勢の展望)」で、政策目標に掲げる消費者物価指数(CPI)上昇率の2%達成時期を先送りした。なぜ、インフレ目標の達成が遅れているのか。

A1 日銀が2%達成目標を先送りしたのは、昨年夏以降の原油安に代表されるように、エネルギー価格が下落しているからだ。新興国経済が減速している影響もある。日銀は、2013年4月に量的・質的金融緩和政策(QQE)を導入した際、2%の物価安定目標を、「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」としていた。今年4月に公表した展望リポートでは、2%の達成時期が「2015年度を中心とする期間」から「2016年度前半ごろ」に先送りされ、10月の展望リポートではさらに、「2016年度後半ごろ」に変わった。2度目の先送りである。

Q2 QQEはインフレ目標には効果がないということか。

A2 そうとも言い切れない。確かに原油安の影響は大きく、CPI総合から値動きの激しい生鮮食品を除いたコアCPIは10月に前年同月比0・1%下落し、8月以降3カ月連続のマイナスとなった(図1)。原油安で、電気代やガス代、ガソリン、灯油などエネルギー関連の価格が軒並み下がったからだ。しかし、生鮮食品以外の食料品や外食代、一部の耐久消費財などで価格上昇が見られる。このため、コアCPIからエネルギーを除く「日銀版コアCPI」は前年比1・2%上昇した。日銀の黒田東彦総裁が「物価の基調は着実に改善している」との発言を繰り返す理由は、こうした点にある。

 

Q3 そもそもなぜ、インフレ目標が必要なのか。

A3 実質金利の低下を通じて、設備投資や住宅投資が増えれば、景気を刺激する効果があるからだ。実質金利とは、私たちが普段目にする名目の金利から、人々が予想するインフレ率を引いたものである。例えば、企業が新たに工場を建てたり、機械を購入したりする際に、将来物価上昇が進んで、自社製品の値段が上がることが予想できれば、(仮に販売数量が変わらなくても)将来の売り上げは増えるため、借金の返済負担はインフレの分だけ軽くなる。また、家計も将来値上がりしそうと見れば、消費を前倒しする。家計や企業が予想するインフレ率は足元のインフレ率からの影響を強く受けるため、日銀はQQEの下で物価安定目標を掲げ、人々の予想インフレ率(期待)に強く働きかけようとしている。

 

Q4 2%である必要はないのでは。


Q5 インフレ目標がいまだ達成されないということは、実質金利は下がっていないのか。


Q6 デフレマインドから抜け出せないので、日本はデフレを脱却できないということか。


Q7 長らくデフレ下にある日本では、市場実質金利が自然利子率を上回っていたのか。


Q8 図を見ると足元では市場実質金利が低下しているように見えるが。


Q9 実質金利を自然利子率より低い水準まで引き下げるには、どうすればいいのか。

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この号の掲載号

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