2015年

12月

22日

特集:日本経済総予測2016 2015年12月22日特大号

 ◇2016年はGDPプラス成長

 ◇アニマルスピリットで市場開拓

 

中川美帆/大堀達也/荒木宏香

(編集部)

 

 2016年の日本経済は、緩やかに持ち直す可能性が高い。中国経済の減速で伸び悩む海外を尻目に、国内は堅調な内需が景気を底支え。17年4月実施予定の消費増税の駆け込み需要の押し上げ効果が加われば、比較的安定した経済環境が整う。

 民間シンクタンクなど20社の予測を集計したところ、16年(暦年)の物価変動を除いた実質国内総生産(GDP)は全社がプラス成長を予測(表2)。平均は1・06%増だ。消費や設備投資が緩やかに回復して、転換点の年になるとの見方が強い。

 内閣府が12月8日に発表した15年7~9月期の実質GDP改定値は、年率換算で前期比1・0%増加した(図1)。速報値の0・8%減からプラス成長に転じ、2四半期連続のマイナス成長は免れた。企業の設備投資を上方修正した影響が大きく、甘利明経済再生担当相は12月8日の会見で「(設備投資の)計画に向けて実際の行動が伴ってきつつある」と評価した。

 ただし、先行きには不安材料もある。資源安が続けば、資源依存度の高い商社や海運、建設機械などは引き続き大打撃を受ける。中国では鉄鉱石の投げ売りが表面化してきたため、鋼材価格も下がり、鉄鋼業は今後数年間「厳冬期」に入ったままになるかもしれない。

 また、原油安は産油国の収入を減らす。15年12月に決まる可能性が濃厚な米国の利上げは、新興国から資金を流出させかねない。これらは、世界経済全体の成長を下押しするリスクがある。

 中国経済の減速もあって日本の輸出が伸び悩み、設備投資は計画倒れに終わりかねない。機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる船舶・電力を除いた民需(季節調整値)の受注額は、15年7~9月期に前期比10・0%減少した。10月は前月比10・7%増加したものの、「伸びの約7割を鉄道車両の受注が占めるという特殊要因による。強気の設備投資計画は今後、下方修正される可能性がある」(明治安田生命の小玉祐一チーフエコノミスト)。

  GDPの約6割を占める個人消費も、足元の回復状況は鈍い。15年7~9月期は前期比0・4%増にとどまり、4~6月期の落ち込みを取り戻せなかった。食料品などの値上がりに、賃金上昇が追いつかず、節約志向が続いているためだ。

 日本経済は過去約20年間、バブル崩壊、円高、金融危機、リーマン・ショックなどに見舞われた。「デフレマインド」が染みつき、企業も個人もお金を使うことに慎重になっている。14年度の企業の内部留保は、前年度から約26兆円増えて354兆円(うち現預金は210兆円)となり、過去最高を記録してしまった。

 アベノミクスは、円安・株高が企業収益を増やし、設備投資の増加と賃上げによる消費拡大を招き、企業収益の増加につながるという好循環を目指している(図2)。14年度490兆円の名目GDPは、20年ごろ600兆円にする計画だ。しかし現状は、順調に推移しているとは言い難い。

 こうしたなかで日本経済の成長のカギを握るのは、思い切った投資と生産性の向上だ。日本経済の実力を示す潜在成長率は、わずか0・6%ほど。UBS証券の青木大樹シニアエコノミストは「潜在成長率を高めるには、人工知能など新産業の拡大や、食品、化粧品、住宅リフォームといった内需型産業の海外展開の推進が重要だ」と指摘する。

 企業に投資拡大や賃上げを促すため、16年度税制改正大綱には、法人税の実効税率を16年度に29・97%、18年度に29・74%へ下げることが盛り込まれた。中小企業が新たに購入した機械などにかかる固定資産税を半分にする措置も設ける。

 お膳立てで環境が整えば、今度はいよいよ企業が行動に移す番だ。迫力ある“イケメンゴリラ”として話題を呼んでいる東山動植物園(名古屋市)の「シャバーニ」(写真)のように、「アニマルスピリット」を発揮して不透明感を吹き飛ばし、力強く市場を開拓して、日本経済を成長に導けるか。16年が正念場になる。(了)

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この記事の掲載号

週刊エコノミスト 2015年12月22日特大号


【特集】日本経済総予測2016 

<マクロ編>

2016年はGDPプラス成長

アニマルスピリットで市場開拓 

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