2015年

12月

22日

特集:日本経済総予測2016 「円高恐怖症」を克服する時 ドル高終焉で円安は限界 2015年12月22日特大号

斎藤 満

(グローバルエコノミスト)

 

 2015年のドル・円相場は、1年を通じて変動幅が10円にも満たず(12月初旬時点)、近年になく小幅な変動にとどまった。安定相場と言うより、アベノミクスによる円安政策が勢いを失った感がある。そして、16年には一転して円高方向に動く可能性を秘めている。変動相場制になってから円安が4年も続いた例がないこともあるが、政治的な事情と、長年続いたゼロ金利均衡が崩れ、市場にリスクオフが広がる懸念があるためだ。市場も企業も円高への十分な備えが必要になる。

 

 ◇円安弱めた二つの理由

 

 円安の勢いがなくなった一つの要素として、米国がドル高を嫌い、日本がある程度その意向を尊重して、円安誘導を抑制したことがある。具体的には政府日銀が市場の円安期待を牽制(けんせい)し、日銀は景気やインフレ見通しが下振れする中でも、円安につながる追加緩和を自制したことだ。

 15年6月にドイツで開かれた先進7カ国(G7)首脳会議で、オバマ米大統領が「ドル高は米国経済に負担だ」と発言したとの報道があり、直後の10日、黒田東彦日銀総裁は衆議院で「円の実質実効レートの大幅円安を考えると、これ以上の円安は考えにくい」と円安を牽制した。これは米国の意向を受けた「協調」行動と受け止められ、市場には「1ドル=125円天井説」が広がった。

 ドルは主要6通貨に対して、14年半ば以降2割近く上昇した。ニューヨーク連銀によれば、ドルが10%上昇すると米国の国内総生産(GDP)が0・4%低下するという。ドル高はこれまでに米GDPを1%近く下押しした。しかもドル高が原油価格を下げ、産油国としての米国にデフレ圧力がかかり、金利の正常化を進めたい米連邦準備制度理事会(FRB)にも負担となった。一方、日銀は景気の下振れと原油価格の低迷から、成長率、インフレ率の見通しを引き下げたが、ドル・円が120円台にあっては、円安につながりやすい追加緩和には出られなかった。…