2015年

12月

22日

特集:日本経済総予測2016 国際標準に逆行する税制 外形標準課税拡大は誤り 2015年12月22日特大号

森信茂樹(中央大学法科大学院教授)


 日本の法人税率は、2015年度税制改正で32・11%まで引き下げられ、16年度税制改正で、さらに29・97%へ引き下げる方針が固まった。安倍晋三政権は、「数年かけて法人税率を20%台に引き下げる」という方針に基づき、税制改革のお手本である1980年代の米レーガン政権の「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」という哲学に倣い改革を進めてきた。法人税の課税対象範囲である「課税ベース」の拡大は、(1)欠損金(赤字)の繰越控除制度の見直し、(2)租税特別措置(国税に関する特例を定めた法律)の廃止・縮小を行う、などによって行われてきたが、最もベース拡大に貢献する項目は、外形標準課税の拡大である。

 筆者は、国際的な法人税率引き下げ競争の中、25%程度にまで法人税率を引き下げざるを得ないと考えている。それに伴い「課税ベースの拡大」という美名の下、更なる外形標準化が進む可能性が高い。しかしそれは果たして日本経済の活性化をもたらす税制改革か、疑問を抱いている。

 ◇法人税率のマジック


 外形標準課税とは、地方税である法人事業税のうち、資本金1億円を超える法人に対し、「所得」「付加価値」「資本金等」の三つを一定割合で組み合わせて課税する税制のことで、04年に創設された。

 創設当初の外形標準課税の割合は、所得を基準として課税する「所得割」が全体の4分の3、報酬・給与額などと単年度の損益額を加減して課税する「付加価値割」と、資本金等に資本積立金を加えて課税する「資本割」の二つを合わせた外形標準部分が4分の1であった。しかし15年度からこの外形標準部分が8分の3に拡大され、更に16年度からは8分の5へ拡大される。

 日本の法人税率は、法人の「所得」に対する税率で、「外形標準」部分の負担は含まれない。そのため、課税ベース拡大の下外形標準化を進めていくと、所得割部分の負担が軽減されるため税収は変わらないままで法人税率を引き下げることができる。外形標準課税の全体の面積は変わらない(外形標準課税適用企業の税負担は変わらない)にもかかわらず、法人税率は引き下がるという「マジック」が可能になるのである。…