2015年

12月

22日

経営者:編集長インタビュー 沓掛 英二 野村不動産ホールディングス社長 2015年12月22日特大号

◇未来につながる街づくりに挑む


 野村不動産ホールディングスの足元の業績が好調だ。2016年3月期中間決算は売上高約3000億円、営業利益約400億円経常利益約370億円で増収増益、通期で過去最高益を更新する見通しとなった。沓掛英二社長は「当社の努力半分、外部要因の後押し半分」と謙遜するが、11月策定の中長期経営計画は25年3月期までに営業利益を倍増させる目標を打ち出すなど、攻めの姿勢を鮮明にしている。

── 20年の東京五輪に向けて不動産は好調が続くと見られています。

沓掛 外国人投資家と話す機会があったのですが、今まで以上に熱気を感じました。人口減による市場の縮小を悲観する人もいますが、それについてはちょっと待ってと言いたい。

 50歳以上の人口は今後10年間で首都圏(1都3県)だけで100万人以上増加すると予測される超成長市場です。その中心の団塊世代は、時間とお金があって、子どもに老後の面倒をかけたくないと考える傾向があります。

 そういった層の移転需要の受け皿となる、駅から近く、商業施設などにもアクセスが良い利便性の高い都市型のマンション開発を進めています。代表例が14年に販売した「プラウドタワー立川」(東京都立川市)です。JR立川駅に直結した立地で、平均坪単価は340万円、契約者の6割が50歳以上です。

 

◇シニアは超成長市場


── 人口減でも伸びしろはある。

沓掛 不動産開発は夢のある事業なんです。目先の業績を追っていくことも大切ですが、未来につながる街づくりと豊かな生活の提供が当社の目指すべき姿と考えています。 街づくりで力を入れている事業の一つが、老朽化したマンションの建て替えです。「桜上水ガーデンズ」(東京都世田谷区)、「プラウド北千里」(大阪府吹田市)も建て替えでした。

── オフィスビルなどを含む大規模開発の計画も発表しています。

沓掛 当社にとっては十数年ぶりといっていい大きな開発案件が進んでいます。

 15年に着工した「横浜野村ビル」(神奈川県横浜市、17年完成予定)は延べ床面積8万平方㍍で、虎ノ門や飯田橋駅、西麻布三丁目でも再開発計画があります。

 JR浜松町駅近くの東芝本社ビル跡地(東京都港区)の再開発も進めています。9月末に株式を追加取得して当社の保有比率を95%に高めたNREG東芝不動産が保有するビルの建て替えです。

 オフィス、商業で延べ床面積は50万平方㍍、日本でトップクラスの大規模施設になる計画です。マンション、ホテルも合わせた複合施設を考えています。当社のある新宿野村ビルが約12万平方㍍ですから、これはかなり大きいですよ。ツインタワーを構想していて、24年か25年に第1期工事が完成する予定です。

 

 ◇1・8兆円の資産に投資

 

── 同じ不動産開発でも、ビルとマンションは別物ですか。

沓掛 マンションは消費者のニーズやトレンドをつかむ細やかさが必要です。一方でビルや商業施設は行政との折衝や商業テナントの誘致など高度なビジネス感覚が求められる分野で、財閥系の大手不動産が桁違いのノウハウや知見を積んでいます。

当社はまだまだ。一つずつ挑戦して学んでいかなければなりません。

 とはいえ大手のまねをするわけではなく、当社ならではの資産効率を重視した開発も進めていきます。例えば、都心部に次々と竣工している中規模オフィスビル「PMO」シリーズは、テナントが入居したら速やかにグループのJ -RリートEIT(不動産投資信託)などに売却しています。

── 自社では保有しない。

沓掛 そうです。グループのREIT3法人を合併して10月に上場させた野村不動産マスターファンド投資法人が売却の受け皿になります。資産効率の高さは当社の特徴の一つ。ROA(総資産利益率)は不動産会社の多くが3%台の中、当社は5・4%です。

 財務基盤の強化を重視してきた結果、当社の自己資本比率は30・6%まで高まりました。これからはREITへの売却を通じた資産効率の高い経営と、当社の資産の積み増しを図る段階に入ります。

  25年3月期までの中長期経営計画では、資産の取得・開発で1兆8000億円の投資を計画していますが、半分はグループのREITへの売却を通じて早期の資金回収を図り、半分は当社の資産として保有していきます。

── 資本効率は引き続き重視していくわけですね。

沓掛 資産の保有を伴わない、資産運用や不動産仲介、CRE(企業の保有不動産の有効活用)、約16万戸のマンションの運営管理事業などを合わせた「サービス・マネジメント分野」も強化します。

 16年3月期の営業利益(予想)の内訳は、住宅事業と賃貸(ビル・商業施設など)事業がそれぞれ約300億円、サービス・マネジメント分野が約200億円ですが、19年3月期には住宅300億円、賃貸350億円、サービス・マネジメントを235億円に拡大します。

── マンションくい打ち偽装問題の影響は。

沓掛 お客様は慎重になると思いますが、業績への影響はほとんどないと考えています。ただ、安心・安全についてよりしっかりした対応が求められることになると思います。

(Interviewer 金山 隆一(本誌編集長)、構成=花谷美枝・編集部)

 

横 顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 36歳で支店長になりました。証券マンは経営者に直接会える。マネジメントや経営についていろいろ教えていただき、お客様に育てられました。

Q 最近買ったもの

A 床の間に飾る掛け軸。ネット通販で買いました。

Q 休日の過ごし方

A 庭いじりか、ゴルフです。

 

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■人物略歴

くつかけ えいじ

1960 年生まれ。長野県出身。長野県屋代高校卒業。84年明治大学政治経済学部卒業後、野村証券に入社。2013年野村証券取締役兼代表執行役副社長を経て14年6月野村不動産ホールディングス取締役兼副社長、15年6月から現職。55歳。

この記事の掲載号

週刊エコノミスト 2015年12月22日特大号


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