2016年

1月

05日

特集:世界経済総予測2016 米ドル基軸を脅かす人民元の大いなる野望 2015年12月29日・16年1月5日合併号

◇激変の通貨体制

 

真田幸光

(愛知淑徳大学ビジネス学部教授)

 

 国際通貨基金(IMF)が201511月、中国・人民元をSDR(特別引き出し権)に加えることを決定した。SDRIMFに出資する各国の出資金の単位であり、現在は米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドの4通貨の構成によって算出されている。1610月からは新たに人民元が加わることになり、世界の主要通貨としてのお墨付きを得た。中国が加速する人民元の国際化は、米ドルの基軸通貨体制に挑むという大いなる野望を秘めている。

 中国が人民元国際化に本腰を入れ始めたのは、097月に人民元建ての貿易取引を試験的に認めたときにさかのぼる。その後、香港を拠点に人民元預金の口座開設を自由化するなどし、122月には人民元建ての貿易取引を全面的に認めた。また、人民元建て債(点心債)の発行国も増加し、現在は英国や日本を含む世界12カ国・地域に広がっている。国際銀行間通信協会(SWIFT)によれば、人民元は158月、日本円を抜いて世界4位の国際決済通貨となった。 

 中国が人民元国際化を意識するようになったのは、世界的な金融危機を引き起こした米国発のリーマン・ショック(08年)が絡んでいる。現在の米ドル基軸通貨体制では、米国経済が不安定になれば、為替などを通していや応なくその影響をこうむることになる。また、中国経済が00年代、急速な成長を遂げ、米国の比重が相対的に低下する中で、IMFや世界銀行を根幹とした国際通貨体制は依然として米国が中心であり、中国の台頭が反映されていないという大きな不満がある。

 人民元のSDR入りによって、SDRの構成比率は米ドルが41.9%から41.73%に引き下がる一方、人民元は10.92%とユーロに次ぐ水準となり、日本円、英ポンドを上回る地歩を得た。また、1510月には、国境をまたぐ人民元の即時決済を可能にする「人民元クロスボーダー決済システム」の運用も始まった。中国人民銀行(中央銀行)は156月、初めての「人民元国際化報告」をまとめ、さらなる資本取引の自由化などに取り組む方針を強調している。