2016年

1月

05日

エコノミストリポート:アップルが有機ELを採用へ 2015年12月29日・2016年1月5日合併号

◇液晶からの大転換で産業は激変

 

中村剛

(電子デバイス産業新聞記者)

 

 米アップルが、スマートフォン(スマホ)のiPhone(アイフォーン)に搭載するディスプレー(表示画面)を、現在の液晶ディスプレーから有機ELディスプレー(OLED)に変える見込みだ。アップルは、年間2・3億台のスマホを販売し、業界を引っ張っている。アップルが液晶から有機ELへかじを切れば、他のスマホメーカーもアップルに続く可能性は大いにある。そうなると、液晶が大半を占めるスマホ用ディスプレーが有機ELに切り替わる流れができ、業界全体に大きな影響をもたらすこととなる。

 アップルは、3年後の2018年から有機ELを搭載したモデルを投入する計画とみられる。現在はパネルメーカーの有機ELディスプレーの供給能力に限りがあるため、いきなり全量を切り替えるのではなく、一部機種の採用から始めるだろう。

 

◇薄くて軽い

 

 ではなぜアップルは有機ELの採用に踏み切るのか。それを理解するには、まず液晶ディスプレーと有機ELの違いを知る必要がある。
 液晶ディスプレーは、結晶と液体の両方の性質を持った液晶材料を活用して、映像を表示する機器である。その基本的な構造は、半導体素子の一種である「薄膜トランジスタ(TFT)」と電極を形成したガラス基板で液晶材料を挟んでいる(図)。これに映像を表現するための部材として、特定の光だけを通過させる「偏光板」、赤・緑・青で映像の色を作り出す「カラーフィルター」、そして、LED(発光ダイオード)と光を均一に射出する機能を持つアクリル板である導光板で構成される「バックライト」が付随する。
 これに対し、有機ELディスプレーは、電圧をかけると自ら光る性質を持った有機材料を、ガラス基板に挟んだ構造である(図)。TFT基板を用いる点では液晶ディスプレーと同じだが、有機材料層が発光するためバックライトが不要になる。その分、薄型化、軽量化、消費電力の低減が可能になる。有機材料層に色表現をさせればカラーフィルターも不要となる。
 さらに、有機ELは液晶と比べて、光の輝きが強く、色のコントラスト(対照)も高いうえ、映像情報の入力に対しより高速に応答できるため、鮮明な動画再生を可能にするとされている。また、折り曲げられるほど柔軟なので、これまでにない新たな形状のスマホを作ることもできる。
 ただ、これまでは、韓国サムスン電子製のスマホ「ギャラクシー」シリーズを除くと、まとまった規模での採用事例はなかった。アップルが15年4月に発売した腕時計型端末「アップルウオッチ」に採用されているが、スマホほどの生産規模ではない。この要因は、主に有機EL製造の難しさから来るコストの高さにあるとみられる。……