2016年

1月

05日

特集:世界経済総予測2016 2015年12月29日・ 2016年1月5日合併号

◇ついに米国が利上げ

◇ドル高と人民元安の対立

 

桐山友一/松本惇

(編集部)

 

「労働市場に改善余地が残り、インフレ率も長期の目標(2%)を下回っている。しかし、景気は順調で、今後もこうした傾向は続くとみられる」──。

 米連邦公開市場委員会(FOMC)が9年半ぶりの利上げを決定した2015年12月16日、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は利上げの理由をこう述べた。08年末から続いた事実上のゼロ金利政策を解除し、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を年0~0・25%から0・25~0・5%に引き上げた。

 堅調な景気拡大を続ける米国経済。国際通貨基金(IMF)の世界経済見通し(15年10月)では、米国の実質成長率は15年、2・6%と14年(2・4%)を上回る見込みだ。イエレン議長が今後の利上げペースが緩やかになるとの認識を示したこともあり、同日の米ダウ工業株30種平均株価が前日比1・3%高、翌日の日経平均株価も1・6%高と、市場は金融政策の節目を好感で応じた。

 ただ、今回の利上げには不安定要素がある。それは、「ドル高」の中で迎える利上げという点だ。シティグループ証券の高島修・チーフFXストラテジストは「米国の利上げが始まる前にドル高になったことは過去ほとんどない」と指摘する。日本円など主要6通貨に対する米ドルの総合的な価値を示す米ドル指数の動きをみると、08年3月を底として現在は4割近くも高い水準にある。一方、1986年や94年、04年の利上げ時は、いずれもドル安のトレンドにあった。

 ドル高の裏返しとして示唆されるのが、「相対的な世界経済の弱さ」(高島氏)だ。80年代は日本、90年代は韓国などアジア新興国、00年代は中国などが世界の成長センターとなっていた。だが、現在は中国経済が減速に直面し、代わりはいない。IMFの世界経済見通しでは、15年の世界経済の成長率は3・1%と14年(3・4%)を下回り、中国経済も6・8%と25年ぶりに7%割れが見込まれる。ブラジル経済はマイナス3・0%成長、ロシアもマイナス3・8%成長となる見通しで、00年代に「BRICs」と呼ばれて高成長を続けた新興大国の面影は薄い。世界経済が“米国頼み”の中で迎えた米国の利上げなのだ。

 

◇中国が為替で対抗

 

 失速する中国は、米利上げの機先を制するような行動に突然出た。中国人民銀行(中央銀行)の傘下で上海外国為替市場を運営する中国外貨取引センター(CFETS)は12月11日、総合的な人民元の価値を表す新指標として「CFETS為替レート指数」の公表を始めると発表。新指数は米ドルや日本円など13通貨のバスケットで構成し、「2国間の人民元・ドル相場は、貿易財の国際的な等価性を示す、いい指標とは言えない」と説明。11月30日時点の指数は102・92と14年末に比べ2・93%上昇したという。

 CFETSが新指数を発表した中国の本音には、足元で急速に進行する人民元安に対する、米国からの「為替操作国」との批判をかわし、輸出増加に向け一段と人民元安へ誘導したい狙いが垣間見える。中国人民銀行が15年8月、「市場実勢との乖離(かいり)の是正」を名目に対ドルの基準値を大幅に切り下げたが、世界的な株安を引き起こす一因となり、9月に見込まれたFRBの利上げも先送りされた。これ以上のあからさまな元安誘導は、米国から強い批判を受けかねないが、ある市場関係者は「それでも景気が低迷する中国は、人民元安で輸出を伸ばしたいのが本音だろう」との見方を示す。

 人民元の対ドル基準値は、再び11月に入って元安が進行。12月17日現在では1㌦=6・4757元と約4年半ぶりの人民元安の水準で、三菱東京UFJ銀行の藤瀬秀平アナリストは「市場では対ドルで今後も緩やかな元安が進行するとみられている」と話す。……

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