2016年

1月

12日

エコノミストリポート:不動産 2016年予測 都心オフィス賃料はまだ上がる 2016年1月12日特大号

2016年に開業予定の東京ガーデンテラス Bloomberg
2016年に開業予定の東京ガーデンテラス Bloomberg

◇金融緩和や設備投資拡大が後押し

 

赤城威志

(ジョーンズ ラング ラサールリサーチ事業部長)

 

 アベノミクス開始から3年たち、金融緩和と低金利は、不動産投資市場を活性化させている。

 東京Aグレードオフィス(東京都心5区に所在し、面積・建物高さ・築年等が一定水準を満たす優良オフィスビル)の賃料は2012年以降上昇を続け、15年通年では賃料上昇が世界的に見てもトップクラスになったと予測される。景気回復傾向を反映して、優良ビルの需要は最近、特に増加している。アベノミクス以降の3年弱で賃料は12%上昇した(図1)。売買価格の上昇率は41%に上る。これは、金融緩和による資金が、不動産投資市場に流入したことが要因だ。不動産投資額の増加に伴い、キャップレート(投資利回り。低いほど不動産の価格は高くなる)が縮小して、価格を押し上げている。

 東京Bグレードオフィス(東京都心5区に所在し、Aグレードオフィスに準ずる諸条件を満たす準優良オフィスビル)の賃料が上昇し始めたのは、Aグレードより遅い13年から。この3年間で賃料は13%上昇、売買価格は59%とAグレードよりも大きく上昇している。要因として、リーマン・ショック後に上昇したキャップレートが、この3年間に大きく縮小したことがある。

 今後のオフィス市場で大きな意味を持つのが、企業の設備投資の拡大だ。15年7~9月期の国内総生産(GDP)は、2次速報で年率1・0%増に上方修正された。個人消費の回復に加え、企業の設備投資増加が背景にある。アベノミクス以降、輸出企業を中心に過去最高を記録する企業収益が、ようやく将来への投資へ振り向けられてきている。

 東京オフィス市場の空室率は既に3%程度に下がっており、緩やかな賃料上昇を支えてきた。今後は、企業動向の変化を背景に、賃料上昇がより加速すると予想される。賃料動向を時計に見立てた当社独自の市場分析ツール「不動産時計」において、賃料上昇率が最大となる「9時」を迎えるのは秒読み態勢に入っている(図2)。

 今後、新たに供給されるビルは予約契約が進み、16年に完成するビルは、平均すると既に5割程度のテナントを確保しているようだ。つまり、15年通年で5%強上昇する見込みである東京Aグレードの賃料は、16年に上昇率を高め、通年では5~10%上昇すると当社は予測している。これは世界的に見ても、東京が最も賃料上昇が予想される都市であることを意味している(図3)。

 このような賃貸市場の状況に加え、継続的な金融緩和政策を背景に、現在の良好な資金調達環境も変化はないと思われる。いまだ魅力的なイールドスプレッド(不動産投資利回りと金利の差)は、さらなる投資資金を喚起して、キャップレートを若干縮小させる可能性がある。すなわち16年もオフィスビルの価格は上昇し、投資市場も拡大するだろう。物件の供給不足という懸念材料があるものの、16年通年の投資総額は前年比10%ほど増えると予測している。

 

 ◇地方の商業施設も有望

 

 オフィスビル以外の不動産市場も活況だ。東京の銀座や表参道の店舗の賃料は、この3年間で18%上昇した。アベノミクス後の株価上昇による資産効果で、富裕層を中心にいち早く消費性向が高まり、高級品の売り上げが拡大したことが要因だ。売買価格は60%上昇しており、ここでもキャップレートの縮小が、価格の上昇率を拡大させている。14年後半からは、日本を訪れる外国人観光客の「爆買い」効果もあり、賃料・価格ともに上昇傾向に拍車がかかっている。一般の消費がまだ本格回復していない中、銀座と表参道の店舗は、ホテルとともに好影響をダイレクトに受けている。

 また、物流施設は、ここ数年で特に拡大・増加している。牽引(けんいん)しているのは、物流業務を一括して請け負うサード・パーティー・ロジスティクス(3PL)や、インターネット通販の拡大だ。この3年間で物流施設の賃料は9%、売買価格は36%上昇した。オフィスビルや商業施設に比べ上昇幅は小さいものの、コストに敏感な物流業界で、上昇した意義は大きい。全セクターの中で、キャップレートがリーマン・ショック前の水準を最も早く割り込んだのは、物流施設だ。物流施設の投資総額も著しく拡大しており、近年の躍進ぶりと投資需要の高まりが分かる。

 今後は、商業施設や物流施設を含む全セクターにおいて、若干のキャップレート縮小が予測されるため、短期的に見れば、投資妙味はあると言える。また、外部環境や市場の動きに左右されない、各セクターの優良物件と、専門的な不動産管理手法を生かせる物件は、長期的な観点からも投資需要を集めるだろう。

 中でも特に期待される分野としては、(1)高齢化に伴う高齢者施設、(2)東京五輪と観光立国政策の進展によるホテル、(3)地方への景気回復の波及や、都心部と比べ高いイールドスプレッドを背景とした地方のショッピングセンター、(4)インターネット通販の拡大余地や、近代的な倉庫の少なさによる物流施設──がある。

 

 ◇投資額は3年で3倍に

 

 日本の商業用不動産の投資総額も、この3年間、拡大の一途をたどっている。14年には総額4・7兆円を記録し、市場規模は、12年と比べ2・5倍、11年と比べると3倍以上になっている。15年は統計の出ている1~9月で3・4兆円、前年同期比15%増加した(図4)。………

この記事の掲載号

   週刊エコノミスト 2016年1月12日特大号

 

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