2016年

1月

12日

ワシントンDC 2016年1月12日特大号

中南米経済を成長させられるか(メキシコ)
中南米経済を成長させられるか(メキシコ)

◇米州開発銀行の挑戦

◇中南米の成長狙い民間部門再編

 

安井 真紀

(国際協力銀行ワシントン首席駐在員)

 

 ラテンアメリカ・カリブ(LAC)諸国の経済・社会発展への貢献を目的として、1959年に設立された国際開発金融機関の米州開発銀行(IDB)は、2016年1月、民間部門向け業務を再編する。

 

 IDBは、LAC諸国が持続的に経済成長するには民間部門の一層の育成や発展が重要だとして、IDBの民間部門局などの資金と人員を、主に中小企業向け支援を行う米州投資公社(IIC)に集約する。新IICは、年間事業規模で27億㌦(現IICの6倍)となる見込みであり、トップには、世界銀行グループの国際金融公社前副総裁のジェイムス・スクリヴェン氏が就任する。

 IDBの民間部門向け業務の再編構想が発表されたのは、13年3月のIDB・IICパナマ年次総会だ。それから約3年。現在のLAC諸国の経済は、米国のシェールオイル・ガスの増産に伴うエネルギー価格の低迷、中国経済の減速に伴う鉱物資源・食糧価格の下落、貿易の鈍化により、エネルギー・鉱物資源・食糧の産出国を中心に停滞している。

 政財界を広く巻き込んだ汚職問題を抱えるブラジル、内政・治安の悪化に悩むベネズエラ、長期の債務繰り延べ交渉により投資・開発に後れをとったアルゼンチンは、15年はマイナスあるいはゼロ成長に陥ると見られている。これらを主要加盟国とするIDBも、当面は難しい業務運営を迫られる。

 

◇インフラ投資の促進がカギ

 

 15年11月にワシントンで開催された会合で、IDBのモレノ総裁は、LAC地域の経済成長のカギを二つ挙げた。

 一つは貿易の促進。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の実現により、貿易規模の拡大とともに、貿易取引ルールの国際標準化が進み、TPP参加国のメキシコ、ペルー、チリをはじめとして、LAC諸国が国際的なサプライチェーンに組み込まれることが期待される。

 もう一つは、インフラ投資の促進。民間企業が海外へ事業を展開する際、現地のインフラの整備状況は、進出先選択の重要なポイントとなる。海外から投資を受け入れたい国

にとっても、インフラを整備する過程で、政府の支援体制や法制度の整備が進む。生産拠点、消費市場としての魅力が高まれば、海外企業の投資誘致につながり、産業や雇用が生まれる。

 新IICは、LAC地域のインフラ整備促進、中小零細企業育成、技術開発支援、気候変動対応を優先事業分野としつつ、アジアを含む域外加盟国からの投資も積極的に受け入れる。将来は、出資や資産運用などの業務も拡大したいと意気込む。

 また、IDBの民間部門局は従来から女性の活躍支援にも力を入れている。女性の活用に積極的な企業が資金を調達しやすくなれば、LAC地域の就業率向上と貧困削減にもつながろう。融資・保証案件の審査項目に、女性の経営への関与度合いを盛り込んでいる点は、ユニークな取り組みと言えよう。

 16 年は、日本がIDBに加盟して40年目に当たる。LAC地域は人口6億人、GDP6兆㌦の市場であり、平均年齢は20代と若く、豊かなエネルギー、鉱物、農業資源を有し、インフラの潜在的需要も大きい。新IICの誕生が、日本企業にとっても、LAC諸国とのより一層の貿易・投資を促進する契機となることを期待する。

 

この記事の掲載号

週刊エコノミスト 2016年1月12日特大号

 

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