2016年

1月

12日

経営者:編集長インタビュー 山田義仁オムロン社長 2016年1月12日特大号

◇技術で社会的課題を解決する

 

── オムロンとはどんな会社ですか。

山田 一言で言えば技術にこだわりを持っているユニークな会社です。我々はセンシングとコントロール(制御)の技術を徹底的に進化、深化させてきました。その技術に支えられ、血圧計などのヘルスケア事業、自動改札機などの社会システム、環境関連のパワーコンディショナー(電圧調整器)、ファクトリー・オートメーション(FA)など、多様な事業をグローバルに展開しています。

── センシングとセンサーの違いはなんですか。

山田 センサーは情報を感知するデバイスです。それを価値に変えるアルゴリズム(計算方法)、ソフトのプログラムが重なって初めてセンシングになる。血圧計はセンサーで脈の圧力の変化を取る。その圧力を老若男女、太っていても、正確に血圧値に変換できる技術を持っているのがオムロンの強みです。

── 血圧計の世界シェアは。

山田 50%。家庭用の血圧計は世界で年間3000万台販売され、当社製は1500万台です。家庭で血圧を測って自分の健康を管理する文化を創っていかないといけないと考え、啓蒙(けいもう)活動を続けてきました。その活動がお医者様や学会などに広がり、「オムロンの血圧計は精度が高い」と評判が広まり、シェアが拡大しました。「健康で長生き」は人間の最大の願いです。事業を通じて社会に貢献する、というのが創業者の言葉です。人々の健康増進に貢献するのが我々の企業理念の実践であり、それを常に意識しています。

── 足元の業績は。

山田 今期は売上高8600億円、営業利益700億円で増収減益を見込んでいます。国内シェア首位の太陽光発電向けパワーコンディショナーや中国のスマートフォン向けバックライトの需要停滞が減益の主因ですが、ヘルスケアは2年連続2桁増益、FAも今期5%成長です。

── 売り上げの構成比は。

山田 FAなど制御機器が39%。電動パワーステアリングなど車載事業が16%、電子部品とヘルスケアが各12%、社会システムが10%です。

── FAがやはり強い。

山田 製造業のお客様は、何を作り、どう制御したいかは千差万別。そこで一緒に課題を見つけ、解決することでアルゴリズムができる。それをセンサー、コントローラー、デバイスに組み込んでFAのコンポを作るのが我々の競争力の源泉です。

 産業ロボットに当社のセンサーは欠かせませんが、ロボットだけでは製造ラインはできません。だからライン全体の制御機器が当社製だったり、作られたモノをセンシングする。製造業の全てが我々のお客様、売り上げの6割は海外です。

 

 ◇IoTは大きなチャンス

 

── IoT(モノとインターネットの連係)の動きは追い風になる。

山田 今まで製造現場だけで完結していたモノの制御が、通信機能を持って即座に解析され、最適値化される世の中になる。QCD(品質・コスト・納期)を高いレベルに保つために当社の制御機器が使われていましたが、今後はどういう状態で最高のQCDが出せるか分かるようになる。レシピ化と呼んでいますが「この条件で機械がこう稼働していると最高の製品が出る」「不良品が出る時はこんな予兆がある」と事前にセンシングできればラインを止めずに高いQCDができるようになる。

 さらに人工知能(AI)が普及すれば、経験を積むほどロボットはより賢くなり、状態を認識して最適に動き、スペックの違う商品にも対応でき、混流生産が可能になる。制御の世界は奥深くライバルも多いですが、我々にとって大きなチャンス。しっかり波に乗りたい。

── 自動運転も期待ですか。

山田 自動運転は最初から最後まで自動ではなく、どこかで手動に切り替わる。その時、人間が覚醒しているかを知るには高いセンシング機能が必要です。自動車メーカーとしては医療機器もFAも手がけている当社への期待は大きいはずです。電動パワーステアリングのコントローラーも得意で油圧式より軽く燃費競争に貢献でき、採用車種が増えています。この分野も期待できます。

── 中国での取り組みは。

山田 当社は日本の製造業として初めて中国に進出した歴史を持ちます。日本以外で最も売り上げの大きい地域で生産・販売拠点もある。いまは投資から消費、輸出から内需への経済構造の転換を進める過渡期にありますが、長いスパンで社会的課題の解決が望まれ、それが経済成長の原動力になると考えています。

 とくに省人化と省力化に資するFA、ヘルスケアが大きな柱です。当社では地域の社区病院を通じて正しい血圧管理をやってもらう普及・啓蒙活動を行っています。日本のように厚い社会保障制度がない中国では病気になれば高い医療費がかかり収入は減ります。健康で働くための予防医療が進めば、個人の生活にも国民経済にも財政にも貢献できます。

── 49歳という若さで社長に就任しました。苦労はありませんか。

山田 各カンパニー長にかなりの権限を委譲しているので私がいなくてもオムロンは回ります。社長の仕事は究極的には三つで、一つは決めること。巨額の投資決済や経営方針の変更、事業の売却、とくにネガティブな決断、反対の多い決断は私の仕事。もう一つは何かあった時、責任を取ること。三つめは社員を励ますことです。

 

                                                       Interviewer 金山 隆一(本誌編集長) Photo 平岡 仁:京都市の本社で

 

 

■横 顔

 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 血圧計のプロダクトマネジャーとなり、商品企画と開発、生産、販売の各部門が一体となり事業を成功させることに心血を注いでいました。成功も挫折も経験しました。

 最近買ったもの

 オイルパネルヒーター。乾燥しないので快適です。

 休日の過ごし方

 根が体育会系なので緑の中で汗をかいてます。

 

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■人物略歴

やまだ よしひと

1961年生まれ。大阪市出身。桃山学院高校卒業。84年同志社大学(経済学部)卒業後、オムロンに入社。2008年6月オムロンヘルスケア社長・オムロン執行役員、10年6月執行役員常務、11年6月、49歳で代表取締役社長に就任。54歳。

この記事の掲載号

週刊エコノミスト 2016年1月12日特大号

 

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