2016年

1月

19日

特集:来るぞ!日本株 激突 ドル・円相場対論 2016年1月19日号

◇円安か円高か

株高をサポートする円安は続くのか──。円高、円安をそれぞれ予想する専門家が持論を展開する。
(構成=浜條元保・編集部)

 

◇年末に1㌦=135円に

池田 雄之輔
(野村証券チーフ為替ストラテジスト)

 2016年はドル高・円安が進むと予想する。15年12月16日に米国が利上げに踏み切ったが、米国の株式市場が急落したり、新興国市場の大きな混乱もなかった。16年3月に2回目の利上げを実施し、その後3カ月ごとの利上げを前提に、3月末には1㌦=130円、16年末には135円までドル高・円安になる可能性がある。
 こうした予想をする理由を①ヘッジファンドなどの投機筋の投資ポジション(持ち高)、②日米の金利差、③円の需給バランスから説明する。

 ①投機筋の動向は、15年12月下旬時点で先物市場における円ショート(売り)ポジションはなく、1㌦=122円は円需給だけを反映したレートとなって いる。つまり、円ショートポジションの積み上がりによる投機的な円安効果は、現状のドル・円相場に含まれていない。これは円ショートポジションの急激な巻 き戻し(円買い)が発生しないという点で、円高に向かわないことを意味する。
 ②は12月の米利上げ開始→市場の混乱がないことを確認すれば、 16年の4回の利上げを織り込むだろう。その一方で、2%のインフレ目標の達成が見通せない日本は、ゼロ金利・金融緩和の状況が続く。つまり、日米の金融 政策は正反対にあり、日米金利差の拡大からドル高・円安を促す。
 ③は15年度の証券投資などからもたらされる所得収支は21・1兆円の黒字にな り、円高要因(外貨を売り、円を買う)となるものの、日本企業の活発な海外企業のM&A(合併・買収)などの対外直接投資が16・1兆円、投資信託による 外債投資フロー(投資)が13兆円、公的年金の対外投資が8・4兆円など合算すると、円の需給バランスは22・7兆円の円売りとなる。……

 

◇年末に1㌦=110円に

佐々木 融
(JPモルガン・チェース銀行市場調査本部長)

 過去3年のドル高・円安トレンドが反転して、2016年は円高・ドル安になる。16年末には1㌦=110円程度まで円高が進む可能性がある。
 ドル・円相場だけを見ていると分かりにくいが、円は14年までの3年間と違い、15年には強い通貨に転換していた。理由は、円を取り巻くファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が劇的に変化しているからだ。

 まず日本の経常黒字の大幅な増加だ。14年の黒字はわずか2・6兆円だったが、15年は10月までで14・6兆円に達している。
 14年までの経常黒字の大幅な減少は、11年ごろから始まった貿易収支の急速な悪化が主因だった。日本の貿易収支は11年に赤字となり、その後赤字は14年に10・4兆円まで膨らんだ。貿易赤字拡大の主な原因は、エネルギー価格の急騰とアジアからの輸入の増加だ。
 私は、12年末から14年末にかけての大幅な円安の主因は貿易収支・経常収支の急激な悪化だったと見ている。アベノミクスや日銀による量的・質的金融緩和が心理的な影響を与えただろうが、経常赤字・貿易赤字(円売り・外貨買い)の拡大が、円を大きく押し下げた。 しかし、エネルギー価格下落を背景に、日本の貿易収支は15年に著しく改善し、経常黒字の大幅増加につながった。15年の経常黒字は16・7兆円となり、16年は18・5兆円にさらに拡大すると予想している。……