2016年

1月

26日

特集:地図でわかった原油恐慌 2016年1月26日号

 ◇日本企業にもマイナス

 

 原油を海外に依存する日本企業にとっては、燃料や原材料のコスト削減につながり有益な面もある。実際に、国内のガソリン価格は6年8カ月ぶりの低水準にまで下落している。だが、原油安のリスクは日本企業の業績にも影響が及ぶ。

 

 石油元売りのJXホールディングスは、16年3月期の連結最終損益が2000億円前後の赤字となるとみられる。飲料大手のキリンHDは、1512月期の連結最終損益が560億円で、上場以来初の最終赤字見通しとなった。その主因はブラジル子会社の事業不振だ。ブラジルは、資源価格の急落で経済が悪化し、消費低迷が続いている。「こうした大幅な下方修正は日本株全体に大きなマイナスとなる」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の三浦誠一投資ストラテジスト)。

 

 1月上旬に行われた各業界の新春懇親会では、経営者から原油安を懸念する声が相次いだ。新日鉄住金・進藤孝生社長は、「石油掘削のためのパイプ、運ぶためのパイプラインなど需要が減るのは痛手」と言い、神戸製鋼所・川崎博也社長は「石油の採掘プロジェクトがほとんど延期状態」と語り、富士重工業・吉永泰之社長も「原油安の影響でロシアなどの資源国市場で販売が落ちている」と話した。

 

 地政学リスクも高まっている。原油の減産を巡り対立するサウジアラビアとイランは、イスラム教の宗派対立を背景に外交関係を絶ち、中東情勢の不透明感は強まっている。南米では昨年1112月、資源国のアルゼンチンとベネズエラ両国の選挙で野党が大勝した。いずれも与党が原油安・資源安による国内経済の低迷を打開できなかった。一方、ロシアは、1バレル=82㌦を前提に編成した予算が原油安で成り立たないことから、同40㌦に見直して大幅に歳出を削減する方針だ。

 

 原油価格急騰のマグマがたまっていることも無視できない。経済協力開発機構(OECD)傘下の国際エネルギー機関(IEA)のファティ・ビロル事務局長は昨年12月下旬に来日し、「大手石油企業は(1516年と)2年連続で投資減少する見込みで、これは、ここ30年間で初めてのことで、警鐘が鳴っていることを意味する」と語った。つまり、原油の供給側が投資を減らすことで、16年後半にも盛り返す需要増加に耐え切れず、「価格上昇というサプライズを起こしかねない」と警告した。

 

 原油価格下落と上昇の思惑が激しく交錯する中、市場参加者が予想しない市況が発生している。原油安に端を発するオイルマネーの逃避は、世界的なリスクオフ(リスクを回避する投資行動)を起こした。東京株式市場は戦後初めて大発会から6営業日続落。欧米、中国でもリーマン・ショック以来の下げ幅となった。原油安は世界恐慌の引き金となりかねないリスクをはらんでいる。(了)

 

(『週刊エコノミスト』2016年1月26日号(1月18日発売)20~23ページより転載)

 

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定価:620円(税込み)

発売日:2016年1月18日

週刊エコノミスト 2016年1月26日号

 

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