2016年

2月

02日

経営者:編集長インタビュー 東 和浩 りそなホールディングス社長 2016年2月2日特大号

◇サービスの発想でリテールナンバーワンへ

 

── 資金需要の低迷が言われています。経営環境はどうですか。
東 世間で言われているよりも企業の資金需要は強いと感じています。設備投資関連の融資は、2014年度通期で前年比8%増え、15年度上期は同6%増でした。福岡など地方も良く、業種では製造業や運輸、医療・介護が元気です。中国経済の減速には注意が必要ですが、中小企業取引が中心の当行の業績は景気の先行指標として見られる側面があり、前向きに捉えています。
── 営業時間の延長など、従来の銀行と違う営業形態が話題です。
東 りそな銀行、埼玉りそな銀行などの約400店で17時まで営業しており、今後はグループの近畿大阪銀行にも広げていきます。住宅ローンや資産運用の相談に休日や夜間でも対応する店舗は現在10拠点で、16年度末までに15拠点に増やす予定です。 

 年に約1兆円実行している住宅ローンのうち、休日の契約は4割を超えます。いつでもどこでも顧客が取引できるよう、店舗やインターネットを組み合わせて接点を強化する試みは、「オムニチャネル戦略」としてグループで注力しています。他行と差別化し、中小企業、個人といったリテールでナンバーワンの銀行を目指しています。

 

 15年11月には、公的資金を完済してから初めての新設店舗として豊洲支店をオープンした。

 

── 豊洲支店の特徴は何ですか。
東 休日・夜間取引の機能に加え、口座開設時の印鑑を不要にしました。紙の伝票ではなく、タブレット端末で申し込みができ、顧客に書かせたり待たせたりしません。申し込みからキャッシュカードを渡すまでは15分で終わります。オムニチャネル戦略のモデルとして、同様の店舗をさらに増やす計画です。

◇営業1000人増へ

 

── 営業時間延長などの改革で何がハードルでしたか。
東 一番は銀行の文化を変えることです。13年の社長就任後に始めた休日営業は行内で歓迎されませんでした。ですが、金融は「サービス」です。故細谷英二元会長も言っていたように、銀行が生き残るには、流通業と同様に顧客の期待を基に取り組むべきだと訴えてきました。今でこそ「休日に営業したい」と言われますが、これは2年がたち、成果が上がり、理解を得たからです。他行が追随しないのにはこうした事情があります。
 もう一つはシステムです。銀行の営業時間延長では、閉店後に行う現金の確認作業が問題になるため、ロボットが現金を常時把握する勘定系システムを導入しました。今では行員が現金にほとんど触れることなく、営業終了後の数分で勘定を合わせることができます。
── 一連の改革後、人員配置はどう変えていますか。
東 事務処理を効率化した分、顧客の相談に応じる機会を増やしています。14年度末でグループの事務担当者は1万3600人ですが、このうち1000人を19年度末までに営業担当に振り向ける計画です。
── 低金利の状況でどのように収益を拡大しますか。
東 この低金利はしばらく続くでしょう。我慢のしどころです。米国が利上げし、外債投資の強化はあり得ますが、量の急拡大や(ヘッジファンドなど)オルタナティブ投資は考えていません。収益の中心はあくまでもリテールです。特に投資信託や保険、決済などフィー(手数料)ビジネスの収益は15年度上期で前年比5%増で、期待できます。資産運用では、15年8月設立の運用会社「りそなアセットマネジメント」で投資信託の商品を充実させます。

 

 りそな銀行は、預金や融資が中心の「商業銀行」だが、財産を保全し、管理・運用する信託業務を認められた「信託銀行」でもある。

 

── 信託の機能をどう生かしていますか。
東 グループの約600店で信託業務を提供しています。高齢社会のいま、中小企業の事業承継や個人の財産相続などで信託のニーズがあり、収益も伸びています。信託銀行の併営業務である不動産売買の仲介手数料も好調です。
── 個人取引で主力の住宅ローンは、将来伸びが鈍化しませんか。
東 国内が人口減少の局面にあり、減る可能性はあるでしょう。ただ、住宅ローンはリテールの銀行に重要なサービスです。長期間の取引で顧客と関係を築き、リフォーム関連の資金や、住宅を担保にして融資するリバースモーゲージローンなど、さまざまな提案を図ります。
── 金融とITを融合した「フィンテック」にどう対処しますか。
東 データベースを分析し、顧客のニーズに合わせた提案に生かすことが重要だと思います。支払いの利便性向上のため、キャッシュカードと一体型のデビットカードを広げていますが、これで得られる購買情報が貴重な財産です。今後は、顧客の位置情報をスマホで把握し、車販売店の訪問時にその場で自動車ローンを提供するといったサービスも考えられるでしょう。
── 業界再編への考えは。
東 地域金融機関は、連携の相手と捉えています。信託の代理店や、M&A(合併・買収)に関わる取引先の紹介などで提携しており、勘定系システムの提供も検討しています。

(Interviewer 金山 隆一・本誌編集長、構成=藤沢壮・編集部)

 

■横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 資本市場部で取引先の社債発行のお手伝いをしていました。競争が激しい職場でしたが、顧客への提案がベースで、学びがありました。
Q 最近買ったもの
A 特にありません。
Q 休日の過ごし方
A 散歩をしています。

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■人物略歴

 

 ひがし かずひろ

福岡県出身。鹿児島ラ・サール高校卒。1982年上智大学経済学部卒、埼玉銀行(現りそな銀行)入行。2009年りそなホールディングス取締役兼執行役副社長などを経て、13年4月同社社長兼りそな銀行社長就任。58歳。

この記事の掲載号

週刊エコノミスト 2016年2月2日号 表紙

定価:670円(税込み)

発売日:2016年1月25日

週刊エコノミスト 2016年2月2日号

 

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