2016年

2月

02日

農業がヤバい:コメどうする 2016年2月2日特大号

◇大規模経営は破綻寸前

◇米価急落、コスト削減の限界

 

石堂 徹生

(ジャーナリスト)

 

 水田経営の大規模化は、1961年の農業基本法制定以来の悲願だ。大規模化でコストダウンを図り、価格の安い輸入米を迎え撃つ。そこに近年は、国産米輸出がセットとなった。この悲願がTPP大筋合意後、一段と声高に叫ばれるが、実はこの経営モデルは既に破綻寸前だ。大規模経営はコストダウンのために経営努力を重ねているにもかかわらず、米価下落には追いつかず大赤字。補助金で何とかしのぐのが実情なのだ。

 ◇10~15ヘクタールの壁

 

 茨城県筑西市の山善農園は筑波山のふもと、昨年9月初旬の台風時に鬼怒川が決壊して大きな被害を受けた常総市にほど近い。水田83ヘクタールのうち43ヘクタールでコメを、残り40ヘクタールで小麦と大豆を栽培するのが主。83ヘクタールは稲作経営の上位1%にあたる規模だ。

 台風の被害は幸い受けなかったが、高温と日照不足でクズ米が多く、社長の杉山善司さん(60歳)は「今年は1000万円程度の減収だ」と肩を落とす。

 杉山さんは30歳で農業を継ぎ、40代半ばの2000年前後に水田をそれまでの1ヘクタールから3ヘクタールに増やした。その後、高齢化や米価下落で農地を貸し出す農家が増えてきて、この10年で20ヘクタールから一気に83ヘクタールへと急拡大した。

 杉山さんは大規模経営の実情を知ってほしいと、14年の経営内容を詳細に説明してくれた。それが表だ。13人の従業員と季節労働者を雇う。農業の収入と支出では差し引き4970万円の赤字。支出の4割近い大赤字を埋める頼みの綱は補助金。コメの320万円、麦の1600万円、大豆の1400万円、畑作物の1650万円で、この四つを合計した補助金4970万円で穴埋めした形だ。

 だからといって山善農園が経営努力を怠っているわけではない。

 山善農園の10アール当たりのコメ費用合計は、全国平均(09年農林水産省調査、15ヘクタール以上)より4割も安い。苗を水田に植える代わりに、乾いた田に直接種子をまく省力型の耕作も試みる。小麦と大豆の収量は平均をはるかに超える高い生産性を誇り、06年に大豆生産で農林水産大臣賞を受賞した。販売でも、農協出荷より2割程度高い居酒屋チェーンなどの販路を開拓している。

 他の大規模経営ではどうか。

 規模拡大について全国的に実証的研究を進めてきた中央農業総合研究センター(農業・食品産業技術総合研究機構)の梅本雅・企画管理部長は「山善農園に限らず、多くの大規模経営の営業利益は赤字で、営業外収益の補助金を加えた経常利益でようやく黒字だ」と指摘する。・・・・・・