2016年

2月

02日

農業がヤバい:農政大転換の迷走 2016年2月2日特大号

◇2018年、コメがあふれる

 

黒崎 亜弓

(編集部)

 

 農家=弱者として保護してきた政策の典型は、コメだ。価格を支持する政策が形を変えて残ってきた。改革のあるべき姿とされてきたのは、国による生産・流通の統制を外し、価格を市場に委ねる形への転換だ。

 政府は2018年の“生産調整の廃止”を掲げる。生産調整による価格支持政策をやめれば、本来、米価は下落する。米価下落の影響を緩和するための政策としては、生産者に対する補助金の直接支払いが挙げられる。

 民主党政権の10年に始まった戸別所得補償制度は、コメ農家に米価と生産コストの差額として10アール当たり1万5000円を直接支払うものだった。ただし、麦・大豆の転作はじめ生産調整に従うことが支給条件。つまり、同時に価格を維持する手段でもあった。ただし、実際には所得補償を理由に米価は下落した。

 現在の自民党政権は、民主党が始めた戸別所得補償の手段を否定。移行措置として7500円に引き下げた。稲作経営への影響緩和のため、多額の補助金で飼料用米の生産などに誘導し、主食用米の供給を抑える。再び、米価支持にまい進しているのだ。「税金を投入しながら、家計に負担を掛けている。輸出に不利で、輸入を促進するものだ」と高崎経済大学の吉田俊幸名誉教授は指摘する。

 価格支持政策の放棄が生産者に及ぼす打撃を、補助金の直接支払いで補う政策モデルとしては、欧州がよく引き合いに出される。

 欧州連合(EU)は1992年に直接支払い制度を導入した。それまで政府が農産物を買い入れ、輸出に安く振り向けてきたが、それは余剰農産物を他国に押し付ける構図である。増産するほど生産者の収入が増えるため、肥料の大量投入などによる環境への影響も問題視されていた。

 価格支持から直接支払いへの転換当初は価格下落分を補っていたが、その後は、生産の中身とは関係なく農地ごとに一定額を支払う。経営の自由度を確保する形だ。・・・・・・