2016年

2月

09日

ワシントンDC 2016年2月9日号 

追い上げるサンダース候補(右) Bloomberg
追い上げるサンダース候補(右) Bloomberg

 ◇サンダース氏が急浮上

 ◇接近戦に転じた民主党の指名争い

 

今村 卓

(丸紅米国会社ワシントン事務所長)

 

 11月の米大統領選に向けた民主党の指名争いが、無風から接戦に変わってきた。党内支持率で首位のヒラリー・クリントン前国務長官を2位のバーニー・サンダース上院議員が猛追している。

 全米の民主党支持者を対象にした12月中旬の主な世論調査では、クリントン氏の支持率は2位のサンダース氏と20ポイント超の大差があった。だが1月中旬の調査では、クリントン氏の支持率が50%前後に低下し、サンダース氏が40%弱まで上昇した。

 

 予備選・党員集会で特に重視される序盤2州の戦況も変わった。全米の先陣を切って2月1日に党員集会が行われるアイオワ州では、両氏大接戦になっている。翌週9日が予備選のニューハンプシャー州では、従来からサンダース氏が首位だったが、最近はクリントン氏との差を広げて勝つ可能性が高まっている。思わぬ苦戦に直面したクリントン陣営は、戦略を練り直し始めたという。

 

◇格差是正求める若年層が支持

 

 サンダース氏の主張は、地球温暖化対策、大型金融機関に対する規制強化など、非常に進歩主義的だ。最近まで党内での支持も限られていた。支持率向上の最大の理由は、「民主社会主義者」を自称する同氏の格差是正への訴えと熱意が、若年層を中心に浸透してきたことにある。同氏は、富裕層への課税強化、最低賃金の引き上げ、公立大学の授業料無料化などを主張。近年の格差拡大の直撃を受ける30代半ば以下の「ミレニアル世代」に強く好まれている。

 一方のクリントン氏は、格差是正の必要を理解しつつも、民主党の指名獲得後の共和党候補との対決を重視。無党派層に敬遠される恐れがある、リベラル色の強い政策の主張は避けてきた。しかも同氏は現実重視の政治家。夫のビル・クリントン元大統領と共に、民主党内で財政重視の穏健派を主流にしたとの自負もあったはず。財源の裏付けを重視せず、議会で共和党に反発され、実現が絶望的な政策を訴えることをいとわないサンダース氏と、同じ舞台で論争しようとは思わなかっただろう。

 しかし、サンダース氏の支持者が増えたため、クリントン氏は「ワシントンでの政治的な駆け引きに明け暮れた古いタイプの政治家」というイメージが広がりかねない情勢だ。サンダース氏が74歳とクリントン氏より高齢で、ワシントンでの政治家の経験も長いにもかかわらず、だ。

 こうなるとクリントン氏も、若年層などの民主党支持者との距離を縮める努力が必要になる。だが、サンダース氏とリベラルの純度を競えば、無党派層がクリントン氏から離れる。バランスが非常に難しい。

 民主党の指名争いに限れば、クリントン氏の勝利は動かない。同氏は選挙資金と陣営の規模で今も圧倒的に優勢だ。サンダース氏は序盤2州以外の活動は手薄。黒人やヒスパニック系の支持では、クリントン氏が大きくリードしている。序盤2州をサンダース氏が連勝しても、その後の予備選はクリントン氏が勝利を重ねて指名を得る見通しだ。

 ただ、サンダース氏の支持拡大は、クリントン氏に重荷になるだろう。指名争いが長引くことで、クリントン陣営から流出する選挙資金は膨らむ。陣営は、4月まで指名争いを続ければ約5000万㌦の資金が必要と試算しているという。指名獲得後に無党派層への浸透を目指すだけでなく、民主党内のサンダース氏の支持者を一般投票までつなぎ止める必要もある。このバランスも難しい。

 主流派候補が指名されない可能性が高まっている共和党に比べ有利とはいえ、クリントン氏と民主党にとっても、秋まで長く過酷な選挙戦が続くことになりそうだ。(了)

この記事の掲載号

週刊エコノミスト 2016年2月9日号 表紙 資産防衛

定価:620円(税込み)

発売日:2016年2月1日

週刊エコノミスト 2016年2月9日号

 

 

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