2016年

2月

09日

北朝鮮:「水爆実験」は金正恩の見え 2016年2月9日号 

 ◇制裁の鍵は中国石油パイプライン

 

西村 金一

(軍事・情報戦略研究所長)

 

 北朝鮮が1月に初めて成功したと発表した「水爆実験」について、日本のほか、米国や中国、ロシア、韓国の専門家は、それが本当に水爆であったのかどうか懐疑的な見方を示した。観測された爆破の威力が小さかったためだ。 

 

 ◇爆破威力は従来並み

 

 韓国気象庁によれば、北朝鮮北東部にある豊渓里(プンゲリ)核実験場周辺で観測された揺れの大きさはマグニチュード(M)5前後。推定される水爆実験の爆破威力は6キロトン程度だった。だとすれば、北朝鮮が2013年2月に実施した前回の核実験の爆破威力6~7キロトンと同程度ということになる(周辺振動はM4・9程度)。破の威力が小さかったためだ。

 前回の核実験について、韓国参謀本部の鄭承兆(チョン・スンジョ)議長は、北朝鮮が「ブースト型核分裂爆弾」(強化原子力爆弾)を使用したと分析した。ブースト型核分裂爆弾は、重水素と三重水素の核融合反応を利用して爆弾の威力を高めるもので、通常タイプの原子力爆弾の3~4倍の威力を持つ。開発の進捗(しんちょく)度合いで言えば、水素爆弾の前段階に位置づけられる。

 今回の水爆実験でも、仮にブースト型核分裂爆弾を使用していたとすれば、前回の通常タイプの原爆を使った実験に比べて3~4倍、つまり18~28キロトンの爆破威力がなければならないはずだ。

 自衛隊OBの専門家も、北朝鮮の核開発技術について「ブースト型核分裂爆弾を製造することは可能かもしれない。しかし、小型化する技術力までは有していない」と見ている。そのため今回の実験も、水爆が使われた可能性は限りなく低いというわけだ。

 北朝鮮は15年5月にも、北朝鮮メディアを通じて新型潜水艦が水中から弾道ミサイルを発射することに成功したと発表した。しかし、その実験を撮影した映像が示されなかったため、各国の軍事専門家はやはり懐疑的な見方を示した。

 こうした反応を受け、北朝鮮は水中からのミサイル発射映像を流したが、後に米国の映像であることが判明し、かえってその技術力に疑念を深めさせたことがあった。

 今回の水爆実験がこの潜水艦からのミサイル発射実験と同様、偽りだったとすれば、なぜ北朝鮮は軍事力を実力以上に見せようとするのだろうか。その理由の一つに、金正恩(キム・ジョンウン)政権が思うような成果を上げることができていないことがある。

 例えば軍事面では、大量破壊兵器に関し、12年4月、同12月に長距離弾道ミサイル「テポドン2号」を発射。13年2月には3回目の核実験を実施した。しかし、これらは金正日(キム・ジョンイル)前政権の既定路線を踏襲したものに過ぎず、国内外では現政権の成果であるとは捉えられていない。

 通常兵器も、15年10月の党創建70周年記念パレードを見る限り、登場したのは主力戦車「62式」や小型輸送機「An─2」、地対艦ミサイル「シルクワーム」といった時代遅れのものばかりで、新型兵器を開発できないばかりか更新することもできていない現状を明らかにした。