2016年

2月

16日

【マイナス金利】中国経済成長の終焉 2016年2月16日号

民間非金属部門の債務残高と増加倍率

 ◇民間債務残高はGDP比200%超

 ◇未曽有の債務処理が待つ「宴の後」

 

竹中正治

(龍谷大学経済学部教授)

 

 中国の爆食型経済成長は終わり、実体経済面でのバブル崩壊は歴然としているにもかかわらず、過剰債務の調整にいまだ入っていない大国の行く末は。

 

 中国をはじめ新興国経済の失速に伴った通貨安や株価下落について、次のような解説がメディアで流布している。

  リーマン・ショック後の米国の量的金融緩和(QE)はドルの過剰流動性を生み出し、資金は新興国に流れ込んでいた。ところが米国のQE終了と利上げを契機にドル資金の米国への還流が始まり、新興国の株式や為替相場を下落させている──。

  これを「ドル過剰流動性説」と呼ぼう。しかしこれは次の2点でかなり怪しげな説だ。第一に米連邦準備制度理事会(FRB)のQEによるマネーは、米銀がFRBに置く当座預金残高として積み上がったままだ。実際、2009年以降のドル通貨供給量(M2)の平均伸び率は6・5%と2000年以降の長期平均値とほぼ同じ水準にとどまっている。

  第二に新興国の信用膨張の90%以上は、自国の信用膨張の結果であり、ドル資金は極めて限界的な役割しか果たしていない。国際決済銀行(BIS)のデータに基づいた中国を含む主要新興国の民間非金融部門の債務残高と過去10年間の増加倍率を一覧にした表を見ていただきたい。15年6月末時点の中国の民間非金融部門の債務残高はドル換算で21・3兆ドルと他を圧倒する規模だ。しかし中国の非金融部門のドル建て債務残高は1・2兆ドル弱であり、債務全体の5・5%を占めるだけだ。つまり「ドル過剰流動性説」は、ひどく誇張された説なのだ。

 

  ◇GDP比50%規模の処理

 

  また中国の民間非金融部門の債務総額は過去10年で8・5倍に急膨張している。その債務残高のGDP比率(以下「債務比率」)の推移を示したものが図1である。右肩上がりで上昇しているが、09年以降は特に急勾配で上昇している。その結果、08年12月に117%だった債務比率は、15年6月には201%に急膨張した。

  債務比率が高くても、資産が健全であれば問題はない。実際、先進国の民間非金融部門の債務比率は、途上国のそれに比べて相対的に高い。これは長年の経済成長の結果、債務の見合いにある資産サイドの蓄積が進んだ結果だ。しかし中国の民間非金融部門の債務比率は、▽経済成長率が鈍化した09年以降逆に急上昇したこと▽201%という直近の水準は、主要な先進国と途上国の中で突出した高水準であること──に注意が必要だ。

  中国の09年以降の債務比率の急上昇は、世界不況の下での大規模な内需拡大景気対策の結果である。この時の景気対策は中央政府の財政支出拡大もあったが、信用拡大に依存した地方政府などの公共事業(固定資本形成)に拍車をかけた。

  しかし債券発行などが規制されていた地方政府は簿外の資金調達を担う投資会社「融資平台」を使い、銀行融資と債券発行の双方で資金を調達し、建設投資を推し進めた。融資平台は事実上、地方政府の運営だが形式上は民間非金融部門に分類されていると見られる。

  また銀行セクターの信用比率と、非民間金融部門の債務比率が、特に09年以降、後者が前者を上回る形でギャップが広がっている。両者のギャップを埋めるのが、理財商品と呼ばれる債券発行の形態をとった「中国版シャドーバンキング」であり、ギャップは15年6月末時点のGDP比率で50%と巨額に達した。

  資産バブル、つまり過剰な固定資本形成と資産価格の高騰は必ず信用(債務)の膨張を伴う。1980年代後半からの日本のバブルは民間非金融部門の債務膨張を、米国の00年代の住宅バブルは家計の住宅ローンの膨張を伴って生じた。そこで図1には、日本の民間非金融部門と、米国の家計部門の債務残高比率を合わせて示した。それぞれバブルの形成と崩壊が、債務比率の上昇(信用の膨張)と下落(信用の収縮、債務整理)としてくっきりと表れている。………

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この記事の掲載号

定価:620円(税込み)

発売日:2016年2月8日

週刊エコノミスト 2016年2月16日号

 

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