2016年

3月

01日

経営者:編集長インタビュー 津田純嗣 安川電機社長 2016年3月1日号

 ◇産業用ロボットで世界トップを走り続ける

 

── 売上高約4000億円のうち、約21%が中国市場です。最近の中国経済減速をどう見ますか。

津田 中国には1990年代に参入し、製鉄所の大型高炉に使うドライブシステム(モーターと速度を制御するインバーターで製造工程ラインを効率的に動かす装置群)、セメントや鉱山向けのコンベヤー、素材産業の産業用ロボットなど当社の製品が多く使われています。そして、自動車、スマートフォン、半導体、太陽光パネル、液晶パネルを製造するロボットが伸びてきましたが、各分野で設備過剰になっています。市場拡大の後に過剰設備に陥る歴史が繰り返されているという認識です。

 中国市場での量の拡大は間違いなく収束していきます。これはマイナスです。ただ、設備の更新需要がこれから始まります。中国政府は自動化・ロボット化を進めており、実際にかなり速いスピードで導入が進んでいます。プラス面もマイナス面もあるのが中国市場です。

── 更新需要は、どういう産業で起きますか。

津田 特に鉄鋼は、設備が古く効率が悪いです。2015年に年間8億㌧を超えた粗鋼生産が今後、下落するとしても7億㌧の水準は続くでしょう。更新需要は大きく、むしろ安定した形になると見込んでいます。

 また、中国の経営者は、人手不足に強い危機感があります。長期的な思考で動いており、「今10万人いる工場が10年後に1万人足りなくなると、現状の生産さえ維持できなくなる」などと今の問題として考えています。だから、安川電機がこれから中国ですることは山ほどあります。

 安川電機は、産業用ロボットメーカー世界大手として、ファナック、独KクーカUKA、スイスのABBの3社と激しく競っている。安川電機のコア技術は、モーターとその制御。製品では、モーターの回転を効率よく制御し省エネに貢献する?インバーター?、半導体の基板や食品の仕分けなど位置決めの制御を精密に行う?サーボモーター、関節にサーボモーターを組み合わせた産業用ロボットなどがある。いずれも世界トップクラスの座にある。

 業績は好調だ。15年4月から12月までの業績は、売上高が前年同期比で6・6%増の3064億円、営業利益は同23・3%増の272億円と過去最高を記録している。

── 安川電機のロボットの強みは何ですか。

津田 お客様には、多数のロボットを一体で制御できるのが圧倒的に強いと言われます。あとは、ロボットが正確な軌跡を描きながら動くので、溶接やペイントの精度が高いという評価をもらっています。ウオータージェット加工(超高圧水で切断する)やレーザーなど最大で6台のロボットを制御できる技術は世界トップレベルです。

── モーターはどうですか。

津田 自画自賛にはなりますが、当然、ハードウエアの強みはあります。大きさはこの20年で10分の1になり、制御する装置も応答性や効率が格段に上がっています。また、当社はただ製品を作って売るのではなく、それぞれの産業に合った使い方を提案します。その仕事ぶりがグローバルでも認められています。

── 安川電機のモーターはどこで使われていますか。

津田 家電用は入っていませんが、産業用にはかなり入っています。例えば、立体駐車場、ビル空調の制御装置、コインランドリー、自動車などです。動くものでスピードが変わる大きなものには必ず安川電機が入っています。工場や機械にとっての「産業の米」と言ってもいいでしょう。理想の工場や理想の機械を作るのが使命ですから、我々は常に走り続けないといけません。

 

 ◇AI活用はヒト中心

 

── 新しい分野の取り組みは。

津田 太陽光発電や風力発電などの「創エネ」。蓄電池や水素などいろんな方式が議論されている「蓄エネ」。エネルギーをムダにしない「活エネ(省エネ)」の3分野に注力します。

 日本では、あと15年で1000万人くらい労働人口が減るとも言われるなか、人手がかかっている業界を強化します。特に、食品業界は人手がかかりすぎているので、ロボット化を進めていきたい。

── 人工知能(AI)の活用は。

津田 無人の自動運転のように使うことはありません。ものづくりはなぜ失敗したかを分析できないと、改善につながりません。AIに考えさせるとそれができません。最後は、人間がAIのアルゴリズム(計算方法)を検証しなければいけません。

── 25年に売上高を8700億円、営業利益率を10%以上という長期目標を掲げています。M&A(合併・買収)も選択肢でしょうか。

津田 当然、買収が必要になります。今後10年で不況が2回くらい来るでしょう。そのなかで売り上げが2000億~3000億円ほど足りません。コア技術としっかりつながっているところと一体になるM&Aで、シナジー(相乗効果)を出すというのが大前提になります。

── 3月21日付で会長職に専念します。小笠原浩新社長には何を託しますか。

津田 権限は100%渡します。ちょうど新しい中期経営計画も始まります。産業は今、AIやIoT(モノのインターネット)、インダストリー4・0などを旗印に大きく変わろうとしています。より技術系の発想ができる小笠原の方がいいと考えています。

(Interviewer 金山 隆一・本誌編集長、構成=谷口 健・編集部)

 

■横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 大阪で繊維業界を担当する営業でした。繊維業

界が作る高級フィルム系の制御はほとんど安川電機に

なりました。楽しかったです。

Q 最近買ったもの

A アコースティックギターです。

Q 休日の過ごし方

A 休日はあまりありませんが、ゴルフと読書くらいです。

 

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■人物略歴

 ◇つだ じゅんじ

福岡県生まれ。福岡県立修猷館(しゅうゆうかん)高校卒。1976年、東京工業大学工学部機械工学科を卒業後、安川電機製作所(現・安川電機)に入社。2012年6月社長に就任。13年3月会長兼社長。64歳。

この記事の掲載号

定価:620円(税込み)

発売日:2016222

週刊エコノミスト 201631日号

 

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