2016年

2月

23日

ワシントンDC 2016年2月23日特大号

◇大統領選の決め手にならない

アイオワ州党員集会

 

三輪 裕範

(伊藤忠インターナショナル会社ワシントン事務所長)

 

 全米50州の先陣を切って、大統領候補を選ぶアイオワ州の党員集会が2月1日、ニューハプシャー州の予備選挙が2月9日に行われ、大統領選はいよいよ本格化してきた。

アイオワ州党員集会で共和党はクルーズ上院議員が勝利

Bloomberg

 これから11月8日の本選挙までの9カ月間、候補者の指名獲得、そして本選挙での最終勝利を目指して、民主共和両党の候補者間で熾烈(しれつ)な闘いが続くことになる。

 アイオワ党員集会とニューハンプシャー予備選挙は、米大統領選の本格的な到来を告げるものとして知られる。ただし、1972年の大統領選までは、アイオワ党員集会ではなく、ニューハンプシャー予備選挙が全米一早い選挙だった。そうした事情があるため、今は両州がワンセットになって、大統領選スタートの象徴的な存在に位置づけられている。

 しかし、一方は党員集会、もう一方は予備選挙と呼ばれているように、運営方式や投票参加資格など、両者の内実は大きく異なる。具体的には、アイオワ党員集会の場合は、両党の党員として事前登録した人だけが参加でき、しかも長時間にわたる討論に参加しなければならない。

 他方、ニューハンプシャー予備選は、事前登録をしない無所属の人でも、投票当日に登録して投票することができる。つまり、アイオワ党員集会に参加して投票する人は、ニューハンプシャー予備選に比べると、登録した政党に対して、はるかに強い思いを持った支持者が多いのだ。

 共和党のアイオワ党員集会には、もう一つ大きな特徴がある。それは、「エバンジェリカルズ」と呼ばれるキリスト教右派が、参加者の57%(2012年)と過半数を占めることだ。

 

 ◇超保守派が有利

 

 アイオワ党員集会には、こうした特殊要因があるため、その後の候補者指名争いの行方を必ずしも正確に占うものにはなっていない。それは過去2回の共和党アイオワ党員集会の結果を見ても明らかだ。

 08年の共和党党員集会では前アーカンソー州知事のマイク・ハッカビーが、そして、12年の同集会ではペンシルベニア州選出の前上院議員リック・サントラムが、それぞれ勝利した。だが両者とも、アイオワでの勝利がその後のモメンタム(勢い)に結びつかず、途中で失速している。両者はキリスト教右派に近い超保守派であることが、「エバンジェリカルズ」が多数を占めるアイオワの共和党党員集会で有利に働いた。だが、アイオワのような特殊な政治状況にない他州の予備選では、そうした効果が得られなかったのだ。

 もっとも、だからといって、アイオワ党員集会が重要ではないということではない。08年の民主党党員集会では、事前の予想を覆し、オバマがアイオワでヒラリー・クリントンを破ったことが、大統領選全体のダイナミクスを変化させ、その後、オバマの民主党候補指名獲得、大統領当選へとつながっていった。76年の民主党党員集会でも、当時、全国的には無名の存在だったジミー・カーターがアイオワで2位に入る健闘を見せ一躍有力候補となり、大統領への道が開けた。

 しかし、前記の通り、アイオワの共和党党員集会は、全米50州の中でも極めて特殊であり、ここで勝ったからといって、それが候補者指名獲得に直接結びつくわけではない。

80年以降、共和党のアイオワ党員集会で勝利した候補が、どれぐらいの確率で最終的に大統領候補になったか調べてみたところ、何と6人に2人と3分の1の確率でしかないのだ。特に、トランプやクルーズのように型破りな候補者がいる今回の共和党の場合、今後の行方はなおさら不透明。まさに本当の勝負は、これから始まることになる。