2016年

3月

15日

経営者:編集長インタビュー 森下 一喜 ガンホー・オンライン・エンターテイメント社長 2016年3月15日号

 ◇「パズドラ」でスマホゲームトップ

 

 スマートフォンやパソコン、家庭用ゲーム機など、幅広い機種を対象にゲームソフトを開発・販売するガンホー・オンライン・エンターテイメント(ガンホー)。主力は、2012年に配信開始したスマホ向けオンラインゲーム「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」だ。

 

── パズドラの特徴は。
森下 スマホやタブレット端末で遊べるオンラインゲームです。画面上に表示されたパズルを三つ以上組み合わせると、味方のキャラクター(モンスター)で敵を倒すことができます。直感的に楽しめます。次のステージに進んだり、新たなモンスターを手に入れたりといった要素を盛り込み、継続しやすくしています。

── 利用状況はいかがですか。
森下 消費者が作品を手に取ったことを示すダウンロード数は、16年1月時点で累計4000万件を超えました。

日本のスマホ契約数7237万(15年9月末時点、MM総研調べ)の半数を超える数字です。幅広い層が楽しんでいて、スマホ向けゲームとしての国内における認知度はナンバーワンを自負しています。
── 開発段階でのこだわりは。
森下 開発していた11年ごろは、ネットを介して人が交流するSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を重視したゲームがはやっていましたが、それに逆らい、直感や達成感を意識して作りました。ガンホーの社員に多い、30代後半の「ファミコン世代」をターゲットとしたためです。
 パズドラが従来のパズルゲームと違うのは、一定時間の間に自分で自由な方向にパズルを動かせる点です。ファミコンの「スーパーマリオ」で画面そのものが動いたときは衝撃を受けましたが、これもルールそのものを変えたゲームです。私自身、元々人を楽しませるために新しいことを考えるのが好きでした。小学校の頃、法事で親戚の子どもが集まって鬼ごっこをするのですが、私はよく変わったルールを提案して遊んでいました。


 ガンホーは、パズドラなどスマホのゲームを無料配信し、作品を有利に進められる有料アイテムを購入してもらい、収益を得る。パズドラの売り上げが寄与し、15年度決算(15年1~12月末)では、売上高1543億円、営業利益724億円を計上した。スマホ向けオンラインゲームの開発企業でトップを走る。

◇海外でも成長

── パズドラが売り上げの約90%を占めますが、懸念はないですか。
森下 パズドラを常に進化させているので、継続して利用しているアクティブユーザーは高い水準を維持しています。利用者がスマホにダウンロードした後も、ゲーム内の期間限定イベントなど、新たな要素を常に加えています。現在数万種類を超えるゲーム内のモンスターは、配信当初から大幅に増えました。
 有料アイテムを重視して顧客単価を上げることはしません。たとえ無料でも、長く楽しんでもらえる人を増やすことで、全体として売り上げを拡大させていきます。
 配信開始から4周年を迎えた今年2月には、パズドラに連携する新たなソフトとして、GPS(全地球測位システム)を応用した「パズドラレーダー」を発表しました。利用者が、自分が訪れた位置に限定したパズルやモンスターを手に入れられる仕組みです。パズドラを持つ人同士がすれ違うと特典も得られます。この春に配信を開始する予定です。
── 他作品の状況は。
森下 新作の開発に常に取り組んでおり、パズドラの他にもヒット作があります。裏返しのカードをめくり、同じ絵柄を素早く組み合わせる「ディバインゲート」は、累計ダウンロード数500万件を超え、女性に人気があります。4×4のマス目上でキャラクターを動かし戦う「サモンズボード」は、累計400万件以上ダウンロードされています。現在放送している人気俳優のムロツヨシさん出演のテレビCMは、代理店任せにせず、キャスティングから自分たちで検討しました。
 新作の開発にあたっては、366人の社員のうち、開発担当に約180人を割いています。開発段階の作品はすべて、社長の私自身が企画責任者として統括し、2~3人で検討します。
── 海外展開は。
森下 米国・カナダの北米ではパズドラが累計900万ダウンロードを超え、右肩上がりで成長しています。近く1000万件を超える見込みです。台湾・香港と、韓国がそれぞれ累計200万件あり、北米も合わせて累計1300万件を超えています。今後も地域を拡大していく方針で、16年度第1四半期中には中国でも展開する予定です。
── 5年、10年後の会社の目標は。
森下 パズドラの生涯顧客を増やしていきたいと思います。よく「パズドラの会社」と言われますが、それでもいいです。無数にあるゲーム作品で、98%は興味を持たれることなく消えていきます。しかもゲームは生活に絶対に必要なものではありません。だからこそ、開発に妥協はしません。
 パズドラを、10年20年続けて孫の世代も遊ぶような作品に育てていきたいと思います。 

(Interviewer 金山 隆一・本誌編集長、構成=藤沢 壮・編集部)

 

■横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 2005年の上場に伴い会社の経営に専念していましたが、09年から開発も統括しています。

Q 最近買ったもの

A 禁煙のために買った電子タバコの「アイコス」です。しばらく使ってみると本物のたばこの味が気持ち悪くなり、吸いたいと思わなくなりました。

Q 休日の過ごし方

A  家族サービスや、外でスポーツをして過ごしています。夏はサーフィン、冬はスキーを楽しんでいます。

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■人物略歴

 ◇もりした かずき
新潟県生まれ。1992年千葉商科大学付属高校卒。ソフトウエア開発会社を経て、2002年ガンホー・オンライン・エンターテイメント最高執行責任者(COO)、04年より現職。42歳。

(『週刊エコノミスト』2016年3月15日号(3月7日発売)4~5ページより転載)

この記事の掲載号

定価:620円(税込み)

発売日:2016年3月7日

週刊エコノミスト 2016年3月15日号

 

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