2016年

4月

04日

ピックアップ:迫るサウジアラムコの上場判断 2016年4月12日特大号

◇時価総額は4兆ドルとも

◇原油安で王族の“虎の子”放出

 

岩間剛一

(和光大学経済経営学部教授)

 

 世界最大の原油埋蔵量を誇るサウジアラビアの有力者、ムハンマド副皇太子が今年1月、国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)を検討していることを表明した。サウジアラムコは現在、欧米の投資銀行との間でIPOに関するコンサルティングを水面下で受けているとみられ、早ければ今年4~6月にも上場の可否についての判断が示される可能性がある。上場が実現すれば、米アップルを抜き時価総額で世界最大企業に躍り出ることは確実で、世界の金融市場や原油市場に与える影響は計り知れない。

 

 ◇増産凍結は不透明

 

 民間石油企業で世界最大なのはメジャー(国際石油資本)の雄である米エクソンモービルで、2015年の原油生産量は日量234万バレルを誇り、売上高2688億ドル(約30兆3700億円)、純利益161億ドル(約1兆8200億円)という巨大企業である。しかし、非上場であるサウジアラムコの原油生産量はそれをはるかに上回り、最新のデータでは14年の原油生産量は日量950万バレルとエクソンモービルの4倍にも達するばかりか、原油埋蔵量は10倍を超えている。

 サウジアラムコは非上場の国有企業であることから、財務諸表の詳細は公表されていないものの、単純に原油生産量の潜在能力を比較するならば、サウジアラムコの時価総額は最大で約4兆ドルに達するとみられる。今年1月末時点の時価総額で世界最大は米アップル(5361億ドル)だが(図1)、それをはるかにしのぐ規模であることが分かる。英誌『エコノミスト』のインタビューに答える形で1月8日までに、ムハンマド副皇太子がサウジアラムコのIPO検討を明らかにしたが、多額のマネーが動く案件とあって国際金融市場はすでに色めきたっている。

 サウジアラビアがサウジアラムコの上場を検討する背景には、言うまでもなく原油価格の低迷がある。ニューヨークWTI原油先物価格は、14年半ばまで1バレル=100ドル前後の高値だったのが、中国経済の減速や北米のシェールオイル産出量の増加を受けて一気に下落。2月には一時、03年5月以来の安値となる1バレル=26・21ドルまで落ち込んだ(図2)。

 石油収入に国家歳入の8割を依存するサウジ政府にとって、原油安は財政の悪化に直結する。サウジ政府は昨年末に発表した16年予算で、870億ドル(約9兆8300億円)もの赤字予算を編成したが、財政赤字は国内総生産(GDP)比で約2割の規模になるとみられる。

 サウジ政府は原油価格の高騰期を通じ、6500億ドル超とも言われる膨大な金融資産を積み上げた。しかし、サウジアラビアは国民の医療費や教育費が無料で、国家予算の半分を公務員の人件費が占めるなど、硬直的な財政構造にある。国際通貨基金(IMF)は昨年10月、このまま財政赤字が続けばサウジの金融資産は5年で枯渇すると警鐘を鳴らした。また、隣国イエメンへの軍事介入などにより、国防費も増大を続けている。財政健全化のためにガソリン、電気料金の補助金の削減や、付加価値税の導入で歳入の増加をもくろむが、国民の反発は強い。……