2016年

4月

05日

経営者:編集長インタビュー 加留部淳 豊田通商社長 2016年4月5日特大号

 ◇自動車以外の事業も成長を目指す

 

 豊田通商はトヨタグループの総合商社。2015年3月期の連結業績は、売上高8兆6634億円、営業利益1694億円と過去最高だった。20年3月期の目標として、当期(最終)利益1400億円、ROE(株主資本利益率)10~13%を掲げている。

── 特に自動車関連が強いです。

 

加留部 自動車バリューチェーンを確立しています。例えば、新素材・先端技術の開発、関連資源の調達、部品の製造販売、タイヤの組み付け、使用済み自動車の資源の再利用など、自動車ではあらゆる事業を行っています。販売面では、代理店がある国でトヨタ車の販売戦略をつくっているほか、ディーラーでの販売、自動車の販売金融や中古車販売まで手がけているのが強みです。

 

── トヨタグループの強みですね。

加留部 豊田通商という会社や商社のビジネスには、わかりにくい面があると思います。当社をわかりやすく表現するため、本籍地はトヨタグループ、現住所は商社と説明しています。トヨタのための商社にとどまっていたら強みである自動車も強くならないし、自動車生産の周辺ビジネスだけをしているようではグループの期待に応えられない。グループのビジネスにとどまらない役割を目指しています。

── 自動車以外の事業を拡大しています。

加留部 自動車と自動車以外の割合は、現在6対4です。自動車以外の成長を目指し、事業分野を「ライフ&コミュニティ」(生活産業関連など)、「アース&リソース」(地球環境や資源など)、「モビリティ」(自動車関連など)の3分野に分け、20年に向けて事業規模を1対1対1にするビジョンを掲げています。

 分野間をまたがる事業領域も重要です。例えばリチウムやヨード。リチウムは電気自動車などの蓄電池として、ヨードはレントゲンの造影剤として使われます。ヨードはチリ、米国、日本の3カ国に偏在していますが、当社の取扱量は約8%。大手商社が扱わないようなニッチな分野に強いのは豊通らしさと言えます。

 マグロ、コメ、パプリカなどの食料にも力を入れています。15年には、ブラジルで穀物インフラ事業会社に投資し、穀物集荷・輸出事業に参入しました。

── 仙台での空港運営事業にも乗り出しました。

加留部 空港事業はインフラと航空事業という二つの観点があります。1999年からラオスで国際線ターミナルを運営しており、ノウハウを蓄積してきました。仙台にはトヨタの工場があり、当社も事業をしているため効果を見込めると判断し、東急グループや前田建設工業と仙台国際空港の運営に乗り出しました。

 航空事業は、リースではなく、部品の物流や物づくりを行っています。米国から輸入した物を日本の部品メーカーに収めているほか、部品メーカーの旭金属工業と組んでマレーシアに航空機用メッキ工場を作り、今年4月から本格稼働予定です。

 

 ◇アフリカに注力

 

── アフリカでの事業にも力を入れています。

加留部 従来注力してきた北中米、欧州、豪州、東アジアに加え、15年4月からアフリカを第5極と位置づけ、強化しています。12年には2345億円を投じて、仏商社CFAOに資本参画しました。当社は元々、アフリカ東南部でトヨタ車の販売をしていたため、中西部に強い同社と地域的な補完ができます。

 CFAOは自動車やビールの「ハイネケン」の生産・販売のほか、医薬品・医療器具にも強く、27カ国で病院、診療所、薬局に納入しています。新たに小売り事業にも参入し、コートジボワールでは15年12月、仏カルフールとスーパーの1号店を開店しました。20年までに西アフリカ8カ国で80カ所以上のスーパーやコンビニなどを展開予定です。

── トーメンとの合併(06年)から丸10年です。

加留部 事業ポートフォリオと人材の面で、メリットがありました。旧豊通は自動車の利益貢献が大きく、いわば農耕民族の文化でした。そこにトーメンのような狩猟民族が入り、新しい事業ポートフォリオ、例えば電力やエネルギーが新しく加わったわけです。

 人材面では、トーメン出身者が旧豊通の部隊に入ったりその逆もあります。交流を図る中で、両方の良さを持ち合わせた人材も生まれています。旧トーメンからトヨタに出向し、トヨタ生産方式を学んで自動車以外のカイゼンを担当する人材もいて、関連会社の第一屋製パンのカイゼンに取り組み、業績改善に成功しました。

── 長期的な経営目標は?

加留部 20年3月期の目標として、最終利益1400億円という計画を掲げています。15年3月期は資源価格下落もあって675億円にとどまりましたが、1000億円突破は視野に入っています。

 ただ、私は数字にこだわるつもりはありません。トヨタグループの「PDCA(計画→実行→評価→改善)サイクル」のように、何をすべきか、その結果何が良くて何が悪かったのかをつかんで「カイゼン」する。数字を追うよりその過程を繰り返すことが、豊通をより強くすると考えています。

(Interviewer金山 隆一・本誌編集長、構成=秋本裕子・編集部)

 

横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 米国駐在から30歳で帰国。主にデンソーのバーコードリーダーを米欧で売る仕事をしていました。朝から晩まで働くモーレツ社員でしたね。36歳で再び米国駐在になり、トヨタとGMの合弁会社(当時)NUMMI向けの自動車部品販売を手がけました。

Q 最近買った物

A 若手女流画家の油絵です。妻と近所にパンを買いに行った時、たまたま見かけて衝動買いしました。

Q 休日の過ごし方

A 名古屋に単身赴任中ですが、なるべく東京で妻と過ごすよう心がけています。

 

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■人物略歴

 ◇かるべ じゅん

 神奈川県出身。県立湘南高校卒業。1976年横浜国立大学工学部卒業、同年豊田通商入社。2004年取締役、08年常務執行役員などを経て、11年から現職。62歳。