2016年

5月

03日

【官邸の狙い】「待機児童ゼロ」で解決と思うな 2016年5月3・10日合併号

保育所入所不可の通知を見つめる母親
保育所入所不可の通知を見つめる母親

◇保育の「質」軽視

 

池本美香

    (日本総合研究所調査部主任研究員)

 

 待機児童対策は参院選の選挙対策の目玉のひとつになると見られている。

 保育所の選考に落ちた女性が2月に投稿した匿名ブログに端を発する形で、待機児童の解消を求める声が拡大している。当初、安倍晋三首相は「本当に起こっているのか確認しようがない」と突き放したが、母親らのデモが起こると、一転して与党は待機児童問題の緊急対策を急きょ取りまとめるなど対応に乗り出した。

 政府・与党の緊急対策には小規模保育所の受け入れ枠拡大、子供の「一時預かり」の定期利用などが盛り込まれている。保育士の給与の月額2%引き上げを、5月中にまとめる「ニッポン1億総活躍プラン」に盛り込む方針との報道もある。保育士の給与については民進党、日本共産党など野党4党が保育士給与を平均月額5万円引き上げる内容を盛り込んだ法案を衆議院に提出している。

 しかし、与党が小規模保育所の定員枠を緩めて保育の受け皿を増やす検討に入るなど、受け入れ余地はすでに限界に達している。保育士の給与引き上げも、継続的な財源確保が伴わなければ、単なる選挙対策のバラマキに終わる。

 これまで自民党は、保育所増設など「量」を重視した政策を進め、保育の「質」は置き去りにしてきた。待機児童問題の対策は従来の延長線上ではなく、量から質への転換が求められている。

 待機児童とは、認可保育所への入所を申請したが、入所できずに順番待ちをしている子供を指す。待機児童数は2015年4月1日時点で2万3167人(前年比1796人増)で、7年連続で2万人を超えている。保育所の増設や定員数の拡大などが行われてきたが、共働き世帯やひとり親の増加のほか、マンション建設による特定の地域での子供の増加などにより保育所の需要拡大に追いついていない。

  国は保育所の開設条件の緩和、国の最低基準ぎりぎりまでの受け入れの要請、企業による事業所内保育施設の設置促進など、お金のかからない即効性の見込める規制緩和策をこれまで打ち出してきた。しかし、一部の施設では園庭がない、保育の質が著しく低いなどの弊害が出てきている。こうした質の低下に伴い、保育施設での事故も増加している。保育施設における15年の治療に要する期間が30日以上の重篤な事故の報告件数は399件、うち死亡事故は14件で、毎年10人を超える子供が保育所で亡くなっている………

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定価:720円(税込)
発売日:2016年4月25日

   週刊エコノミスト 2016年5月3・10日合併号

 

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