2016年

5月

03日

財政危機 借金1000兆円が消えるって、なぜ? 2016年5月3・10日合併号

◇マーケットは納得しない?

 

インタビュー 高橋洋一(嘉悦大学教授)

 

── 「国の借金1000兆円」という現実は日本に明るい将来はないという思いにさせる。しかし、高橋さんはその借金が消えると言っているがどういうことなのか。

── 日銀は独立性が尊重されているから一体として見ることはできないのでは?

 高橋 日銀には政府が55%出資している。日銀法に政府による役員任命権と予算認可権を定めているので、政府のコントロール下にあると考えていいから民間の会社で言うなら、親会社、子会社の関係で会計上連結対象にしておかしくない。私は20年ほど前に国の貸借対照表(BS)を作った。政府内で資産・負債総合管理(ALM)を行う必要があったからだ。ついでに連結ベースのBSも作った。最初は特殊法人など政府出資の組織を全部対象にしていたので日銀も国の連結BSに入れていた。当時は公表してなかったが、その後、公表した時には日銀は入っていなかった。担当を離れていたのでなぜ落としたのかいきさつは知らないが。

── 日銀のHP(ホームページ)には、日銀への出資は出資証券を通じてであり、「出資者に議決権の行使が認められていません」と書かれている。

 高橋 議決権はなくても、役員任命権と予算認可権を政府が握っているのだから、民間の感覚でいけば子会社と考えていいだろう。経済学でも日銀と政府を「統合政府」と一体のものとして分析している。

── 会計上は確かにそうだろうが、トリックのようだ。国民はそれで巨額借金が消えたというスッキリ感がない。

 高橋 財務省の洗脳かな(笑)。政府の借金が消える原資は新たな日銀券の発行にある。日銀が民間金融機関から国債(借金)を買い入れる時は、民間金融機関が日銀に持つ当座預金の数字が増えるだけだが、その数字をいつでも日銀券で支払いますよと約束しているわけで実質的には日銀券を発行したことになる。日銀券を発行すると通貨発行益が発生する。大まかに言えば、1万円の紙幣の発行に15円の製造コストがかかり、その差し引きが通貨発行益になる。だから通貨発行益はほぼ通貨発行額に等しい。その発行益で国の借金を消しているわけだ。そう説明すれば少しはトリック感が薄れるのではないか。量的緩和政策の狙いは予想インフレ率を上昇させ、実質金利を下げることにあるが、結果として国の借金を実質的に減らすことなる。

── 現実には政府と日銀は連結になっていないし、マーケットは借金は消えたと認識せず、国債の信認は低下するのではないか。

 高橋 たとえ連結でなかったとしても国債をめぐる現実は変わらない。政府が支払う国債の利子は日銀に入り、日銀の利益は政府に納付金として入る。政府の利払い費は年間10兆円ぐらいあるが、そのうち3兆円以上は日銀に行くが再び納付金として政府に入る。これは現行制度で決まっているルールだから変えることはできない。

  それから、満期を迎えた国債を日銀が政府に償還を迫るだろうか。たとえ子会社ではないと解釈しても中央銀行が政府を破綻に追い込むようなことを想定して、国債売りを仕掛けるファンドを想定する方が非現実的で、日銀は満期国債を借り換え(ロールオーバー)していくと考えるほうが現実的だろう。日銀保有国債について利払いも償還もなくなるわけだ。

 

  ◇弊害はインフレ

 

── 通貨発行益を得るために日銀券を大量に発行すると通貨価値が下がりコントロールの利かないインフレになる恐れがあるのではないか………

 

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この記事の掲載号

定価:720円(税込)
発売日:2016年4月25日

   週刊エコノミスト 2016年5月3・10日合併号

 

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