2016年

5月

17日

特集:AIの破壊と創造 事例編 囲碁 2016年5月17日号

 ◇AI活用の最前線

 ◇深層学習でプロの「直観」獲得

 

伊藤毅志

(電気通信大学情報理工学研究科助教)

 

グーグル傘下の企業が開発した人工知能(AI)囲碁プログラム「アルファ碁」が3月、世界トップレベルのプロ棋士、李世乭(イセドル)九段に4勝1敗と勝ち越した。快挙を成し遂げる直前の1月末にグーグルのグループが発表した論文から、その強さの秘密をひもとこう。

 ◇人の脳を模倣

 

 囲碁は、将棋やチェスに比べて盤のマス目が圧倒的に多く、対局の際に選べる「打ち手」も格段に多い。また、将棋やチェスと違って、碁石一つひとつには意味がなく、その「つながり方」によって局面の意味を形成する。碁石のつながり方は千差万別で、その意味を読み取ることは非常に難しい。

 人間棋士の熟達者は、この碁石のつながり方を「石の強さ」や「厚み」といった感覚(画像)的な表現を使って理解するが、コンピューターにこうした局面を理解させるのは困難を極めた。そのためトップ棋士を打ち負かすには、まだ長い時間がかかると思われてきた。

 ディープラーニングは、人間の脳の神経回路の仕組みを模した「ニューラルネットワーク」と呼ばれるモデルをベースにしている。このネットワークに、強い棋士による16万局(3000万局面)という膨大な量の棋譜(対局の記録)を繰り返し学習させた。すると、このネットワークは、どんな局面でどんな手を選ぶとよいか、勝敗を分ける要素を自分で見つけ出し、勝手に学習するのだ。

 アルファ碁は、13層という非常に多くの階層構造のネットワークを構築することにより、囲碁のような複雑な問題をも学習しうるネットワークを実現した。この多層ネットを用いて、まず第1段階として、上記のような大量の棋譜を「教師データ」として、次の一手を高精度で予測するシステムを構築した。

 さらに第2段階として、………