2016年

5月

17日

経営者:編集長インタビュー 林野宏クレディセゾン社長 2016年5月17日号

 ◇アジアのネオファイナンス企業を目指す

 

 流通系カード会社の首位を走るクレディセゾン。2015年3月期の営業収益は2590億円、16年3月期の予想は2730億円。近年は、フィンテック(金融とITの融合)にも積極的だ。

 

── 他のカード会社との違いは。

林野 クレジットカード会社を銀行系、流通系、信販系と分けると、クレディセゾンは流通系カード会社を確立させたと言えます。

 カード会社には増益増収の時代がありましたが、06年からの貸金業法の改正などにより業界は壊滅しました。倒産したり、買収される会社が相次ぐ中、クレディセゾンが生き残れたのは、他社がやらなかった業界のタブーを行ってきたからです。

── 業界のタブーとは。

林野 従来、クレジットカードを作るには審査が厳しく、発行に時間がかかりました。しかし、「即与信、即発行、即利用」を1982年に実現させたのです。

 われわれは、女性をターゲットに据えて展開してきました。一番買い物をするのは女性だからです。女性はすぐにカードを作って、すぐに使いたい。高額な買い物はあまりしませんから、キャッシング枠は5万、10万円など少なめでも問題ありません。

── 他にどのような挑戦をしましたか。

林野 90年からは、クレジットカードでの支払いに、サインも暗証番号も不要な「サインレス」を導入しました。スーパーで買い物をする主婦は時間がなく、またサインをするためにレジに列ができることを嫌うためです。

 また、これまで1、2年で消滅していたクレジットカードのポイントを無期限の「永久不滅」にしました。これは、他社にはまねできないことです。なぜなら、ポイントのために600億円、700億円規模の引当金を準備しないといけないから。私が社長に就任した00年からは、キャッシングの金利も段階的に下げました。

── カードの会員も女性が多いですか。

林野 以前は女性の割合が高かったのですが、06年のUCカードの会員事業統合や、法人系カードの会員増加などで男性会員も増えています。

 

 ◇経営を多角化

 

── 足元の業績は。

林野 クレジットカード決済の取扱高が伸びています。提携している商業施設が新たにオープンして新規会員が増えたためです。また、スマートフォンの通信費をクレジットカードで継続決済する人が増えたことも理由です。

── クレジットカードの伸びしろは。

林野 日本は、個人消費におけるクレジット利用は15%で、現金払いが50%強です。米国ではクレジットの割合が約27%なので、日本にはまだ伸びしろがあります。

 もうひとつの伸びしろは、法人需要です。クレジットカードで決済を行う企業が増えてきました。これまでクレジットカードの利用は個人が多かったのですが、これからは法人も増えると考えています。

── 今後の戦略は。

林野 クレジットカードだけに頼らない経営の多角化を進めています。カードビジネスに加え、リースやローンなどのファイナンス事業、企業間決済や経費精算サポートなどのソリューション事業などをグローバルに展開します。

 目指すのは、アジアにおけるネオファイナンス企業です。事業の柱を五つ作り、各事業で200億円、計1000億円の営業利益を出します。

── フィンテックにも積極的です。

林野 もともとITベンチャー企業に出資するなどIT企業と付き合いがありました。しかし、最近は業界の動きが速い。

 そこで、起業の初期段階で投資するためにコーポレート・ベンチャーキャピタルの「セゾン・ベンチャーズ」を昨年設立しました。協業が期待できるベンチャー企業を発掘し、投資します。カード会社の中では、一番フィンテックの取り組みが進んでいると思います。

── たとえば、どんな取り組みですか。

林野 クラウド経費精算の米コンカーと連携し、クレジットカードを使った経費精算の簡略化を法人に提供しています。スマートフォンで経費精算ができるので、企業側は伝票を作成する必要がなくなり、出張先からも精算ができます。精算業務の時間が短縮できれば、その分他の業務に充てることができますし、伝票などの管理コストがなくなります。

── 海外展開は。

林野 12年に初めてベトナムに駐在員事務所を開設し、昨年、現地のHDバンクと提携して個人向け金融サービスの会社を設立しました。ベトナムに営業拠点を約5500カ所持ち、二輪車ローンや家電用ローンなどを展開しています。

 他にも、中国、シンガポールなどアジアに複数拠点があります。インドネシアでは、セブン-イレブン・インドネシアと提携し、プリペイドカードを発行。各マーケットのニーズに最も適したサービスを提供して

います。

 現在、インドやミャンマーでも新規事業を計画中です。1年後には、形が見えてくると思います。

(Interviewer 金山 隆一・本誌編集長、構成=金井暁子・編集部)

 

横 顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 西武百貨店の人事部から企画室に異動し、奔走していました。

Q 「私を変えた本」は

A シュムペーターの『経済発展の理論(上)(下)』です。資本主義の本質である「創造的破壊」が重要だと考えています。

Q 休日の過ごし方

A 1日は体を動かすためにゴルフ、もう1日は休養しながら本を読んだり、仕事をしたりしています。最近は、大谷翔平投手に倣って目標達成用紙を作成しました。

 

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■人物略歴

 

◇りんの ひろし

 

京都府出身。埼玉県立浦和西高等学校卒業。1965年埼玉大学文理学部卒業、西武百貨店(現そごう・西武)入社。82年西武クレジット(現クレディセゾン)入社。2000年6月より現職。73歳。

 

(『週刊エコノミスト』2016年5月17日号<5月9日発売>4~5ページより転載)