2016年

6月

28日

【もう乗れるぞ!自動運転・EV】地図を巡る争い 2016年6月28日号

覇権を握りつつあるヒア

◇日本はガラパゴスの恐れも

 

桃田健史

(自動車評論家)

 

「地図を牛耳るものが、未来の自動車産業の主導権を握る」。こうした理論を証明するような出来事が、2015年8月に欧州で起きた。独大手メーカーであるダイムラー(ベンツ)、BMW、アウディの3社が共同で、フィンランド通信大手ノキアから地図情報会社「HERE(ヒア)」を28億ユーロ(当時のレートで約3800億円)で買収したのだ。

 自動運転において、高精度の地図は重要だ。従来の地図とGPS(全地球測位システム)の組み合わせだけでは、どの道路を走っているかは分かっても、どの車線を走っているかなどの正確な走行位置を把握することができず、適切に車を制御できない。また、地図が道路標識や交通規制の情報などを事前に把握しておけば、車載コンピューターの負荷を減らせる。例えば、三次元地図によって道路の勾配を把握していれば、事前に減速したり加速したりすることができる。
 ヒアは、ノキアが07年に買収した地図関連会社の米ナブテックを前身としており、ナブテックの技術を基盤に、地図のビッグデータ化を積極的に進めてきたことで知られる。カメラやレーザーレーダーなどの各種センサーを装着した地図データ収集車両を約200台所有し、数カ月に1度のペースで欧米を中心に世界各地で実走を繰り返して三次元の高精度地図を作成。道路標識の変更内容などの最新データや、エンジンや変速機をモニターして集めた走行情報を分析することで、地図の精度を高めている。それをクラウド(インターネット上のサーバー)に蓄積し、利用者に提供している。
 この他、ヒアと類似したビジネスモデルでは、「グーグルマップ」や「グーグルアース」などを展開する米アルファベット、アップルなどに地図情報を提供しているオランダのカーナビ大手トムトムがあるが、最も資金力があるヒアの情報量は圧倒的に多いと言える。

 

◇膨大なコストが課題

 

 一方、日本では自動運転に対応する高精度三次元デジタル地図「ダイナミックマップ」を、オールジャパン体制で開発する動きが始まっている。これは、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の枠組みによるものだ。……

 

(『週刊エコノミスト』2016年6月28日号<6月20日発売>36~37ページより転載)