2016年

6月

28日

経営者:編集長インタビュー 山本謙 宇部興産社長 2016年6月28日号

◇化学部門の復活目指す

 

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 1897年、山口県・宇部の炭田を開発するために地元の人たちが出資してつくった「沖ノ山炭鉱組合」が原点。採掘された石炭が工業用として質が良くなかったため、石炭採掘以外の事業にも取り組んできた。現在、「化学」「医薬」「建設資材」「機械」「エネルギー・環境」の5事業を展開している。

 

── さまざまな製品を扱っていますが、事業戦略は。

山本 非化学部門の収益基盤を強化しながら、中核産業の化学部門を原動力に、グループ全体の成長を図っていくことを目指しています。

 復興需要やインフラ更新需要などにより、建設資材など非化学部門が伸びている一方、化学部門は2008年のリーマン・ショック後の中国国内の設備過剰から悪化していて、厳しい状況が続いています。

── 化学部門の取り組みは。

山本 ナイロン、合成ゴム、セパレーター、高機能コーティングの4事業を化学部門の積極拡大分野と位置付け、重点的に資源投入していく予定です。19年3月期に営業利益200億円レベルまでの回復を目標としています。

 化学部門の営業利益は08年3月期に過去最高の327億円だったところ、16年3月期は120億円になっていて、立て直しが道半ばです。16年3月期は設備の定期修理がなかったことや原燃料安などが寄与して一定程度回復してきたので、更なる収益の改善を目指します。

── 化学部門で事業再編を行ったそうですね。

山本 15年に化成品・樹脂カンパニーと機能品・ファインカンパニーを統合し、化学カンパニーとして再編しました。また、家電などの部材に使うABS樹脂国内首位のテクノポリマーと2位のUMG・ABS(宇部興産が50%出資)が17年10月の経営統合を目指して協議を始めました。国内外の競争激化を背景に、製造効率やコスト競争力を確保するのが狙いです。

 欧米などと比べると日本の化学会社は小さく、汎用(はんよう)品は海外展開は難しい状況となっています。提携はどの部門でも起こってきます。

── 注力していく分野は。

山本 リチウムイオン電池(LiB)の主要部材セパレーターです。車載用LiBの国内外市場の需要が高まっています。セパレーターはリチウムイオンを透過させる多孔質フィルムです。トヨタ自動車「プリウス」などのハイブリッド車や電気自動車をターゲットにしています。

 また、日立マクセルと連携し、塗布型セパレーターの加工能力も高めています。

── 資源投入するナイロン事業は。

山本 国内は宇部市、海外ではスペインとタイに、原料のカプロラクタムなどの生産拠点を設けています。食品の包装用フィルムでのグローバルナンバーワンを目指し、スペインとタイの工場でそれぞれ4万トンの増強を計画。燃料電池自動車の水素漏れ防止の役割を担うライナー(タンクの最も内側の層)用のナイロン材料などは、全世界どのエリアでも供給可能な体制を整えていきます。

 

◇ICTも導入

 

── 好調な建設資材は。

山本 セメント需要は約20年前が最盛期で、現在はその半分くらいになっています。以前から製造の合理化を図ったり、セメント製造の際に廃棄物を原燃料に使用し、処理コストを得たりすることで利益を支えてきました。一部で輸出もしています。

── 17年3月期の業績見通しは。

山本 連結売上高が前期比2%増の6550億円で、化学事業で車のタイヤに使われる合成ゴムなどの販売が増えています。営業利益は同15%減の350億円で、ナイロン原料などとして用いられるアンモニアの製造設備の2年に1度の定期修繕があり、その分、利益が下がります。

── 17年3月期から3カ年の中期経営計画が始動しました。

山本 投資額は前中期経営計画(14年3月期~16年3月期)比3割増の1500億円で、ナイロンやLiBのセパレーターなどの生産拠点の能力増強や基盤事業のコスト競争力向上にあてる予定です。最終年度の19年3月期に、連結売上高7500億円(16年3月期比17%増)、営業利益500億円(同21%増)を目指しています。

── 今後の海外戦略は。

山本 化学部門のナイロンは食品の包装用フィルムなどをスペインやタイで増産します。合成ゴムはタイヤメーカーに高機能材を拡販し、国内に加えて、タイやマレーシアの既存工場で増産を計画しています。新しい工場については、立地を含めて将来的に実施するか検討している段階です。

── 製造現場でも改革を行っているそうですね。

山本 宇部工場でICT(情報通信技術)を使った化学プラントの異常予兆検知システムを試験導入して現在改良中です。プラントに取り付けた約1000個のセンサーから集めるビッグデータを解析し、不良品の発生などを未然に防ぐのが狙いです。

── 会社の将来像は。

山本 当社は技術力や製品化する力はあるのですが、市場につなげて利益にする力が足りていませんでした。それを改善し、利益ベースで一番良かった時代を凌駕(りょうが)したいです。

 そのためには、市場調査しながら、既存の事業分野や製品の裾野を広げ、あるいは従来と異なるマーケットに商品を投入しながら、顧客ニーズに合った形の商品を提供します。

(構成=丸山仁見・編集部)

 

◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A メカニカルエンジニア(機械の専門技術者)として船を動かす歯車など回転体の設計を担当していました。

Q 「私を変えた本」は

A 日本や中国などの歴史書です。今まで文化として伝わっているもののルーツが何かを知ることが好きです。

Q 休日の過ごし方

A 近所のジムに行って体を動かしたり、美術館に行ったりします。春には庭園を見に行きました。

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■人物略歴

◇やまもと・ゆずる

広島県出身。広島県立福山誠之館高校卒業。1977年京都大学大学院修了後、宇部興産入社。2003年宇部興産機械社長、07年宇部興産常務、10年専務、13年代表取締役。15年4月から現職。63歳。

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事業内容:化学、建設資材、機械など

本社所在地:東京都港区、山口県宇部市

設立:1942年3月

資本金:584億3500万円(16年3月末現在)

従業員数:1万764人(16年3月末現在・連結)

業績(16年3月期・連結)

 売上高:6417億5000万円

 営業利益:414億800万円

 

 

【訂正しました】この記事は、本誌2016628日号の67ページを転載しています。本誌では、食品の包装用フィルムについて、スペインとタイの工場でそれぞれ増産するのは「40万㌧」となっていますが、正しくは「4万㌧」でした。また、合成ゴム生産について、「マレーシアで新工場の建設も検討しています」なっていますが、正しくは、立地を含めて将来的に実施するか検討している段階のため、本文を訂正しました。