2016年

7月

05日

経営者:編集長インタビュー 高岡本州 エアウィーヴ会長 2016年7月5日特大号

 

 ◇眠りを研究し、寝具を極める

 

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 ベッドの上に乗せて使う高反発マットレスパッドの製造・販売を手掛けるエアウィーヴ(本社・東京都中央区)。浅田真央さん、錦織圭さんなどスポーツ選手を起用したテレビCMでおなじみだ。

 

── ベッドに置くマットレスパッドで急成長しています。

高岡 当社は質の良い眠りをお届けすることをミッションにした会社です。人生の3分の1を占める眠りの質を上げることは、残り3分の2の質を上げることにつながります。公益性の高い会社だと思っています。

── 足元の業績は。

高岡 2015年度の売上高は120億円、今期は新商品を積極的に投入するので、130億~140億円を目指しています。主力のマットレスパッドの価格帯は3万~20万円で、百貨店の寝具売り場など150カ所以上で販売しています。

 

 ◇異業種から参入

── 設立のきっかけは。

高岡 伯父が経営していたプラスチックの機械製造会社を04年に引き継ぎ、赤字の経営を再建するため、射出成型の技術を使って寝具の素材製造へと切り替えたのが始まりです。

── なぜ寝具に着目したのですか。

高岡 若い頃にむち打ちになった経験から、反発力の弱い寝具は体に負担がかかると感じていました。反発力が強いクッション材を使えば、良い寝具ができると考えました。

── 寝具業界への参入障壁は。

高岡 極めて高いです。洋服を買うときは試着しますし、食べ物は試食しますよね。しかし寝具は売り場で寝心地を体験できますが、一晩寝た後の感覚までは比べられません。同じ商品をリピートしがちなので、売り場を押さえた企業が勝ちます。

── どのように販売を伸ばしたのですか。

高岡 売り場にベッドを置いてもらうのは難しいので、ベッドの上に乗せる薄いマットレスパッドを作りました。人間が横になったときに沈み込むベッドの上の数センチの部分を徹底的に研究しました。

 開発に当たり、眠りに敏感な人に使ってもらおうと、いろいろな方に製品をお配りしました。中でも即座に良い反応をいただけたのがアスリートでした。そこで07年から国立スポーツ科学センターで、08年から元水泳選手の北島康介さんをはじめとした水泳選手が使い始めました。

── アスリートの反応は。

高岡 テニスの錦織圭選手からは、腰の持病が軽減されたとのメールを09年にいただきました。フィギュアスケートの浅田真央選手は携帯用のパッドを使っていただいたので、ご自宅用をお持ちしたところ、「自宅用も携帯用と同じ硬さのパッドが欲しい」とご要望をいただきました。実は、携帯用と自宅用のパッドの硬さは、微妙に違います。普通の人にはわかりにくいですが、浅田さんはその違いを感じ取った。それだけ体が敏感だということだと思いました。

 

 ◇株式上場も視野

 

── 支持される理由は。

高岡 通気性の良さと筋肉疲労が少ないことです。エアウィーヴはポリエチレン樹脂繊維を絡め合わせた素材で、マットの大半が空気の層からできており、通気性が高いです。

 また適度に反発力がある素材なので、寝返りを打つときの体への負荷が少ないという特徴もあります。人間は寝ている間に平均20回寝返りを打つといわれており、それ自体が筋肉の疲労になります。低反発マットレスは疲れが残りやすいといわれているのはそのためです。

── 素材、商品を他社にまねされる可能性はありませんか。

高岡 未来永劫(えいごう)まねされない技術はありません。だから、付加価値を高める取り組みを進めています。

 一つはどのような寝具が質の高い眠りをもたらすかを調べる睡眠研究です。11年から米スタンフォード大学とともに、睡眠中の体温の下がり方などを研究しています。エアウィーヴは他社製品に比べて寝てから体温の下がり方が速く、入眠がスムーズなことがわかっています。また米国のスポーツ養成学校「IMGアカデミー」に所属する子どもたちを対象にした調査も行っています。

── 研究をどう生かしますか。

高岡 一つは研究データを基に、個人ごとに体重・体形などを測定してカスタマイズする商品を3月から売り出しています。

 また、オリンピックは商品の良さを伝える良い機会です。リオデジャネイロ五輪では日米の選手、2000~3000人に使っていただきます。

 マットレスで米オリンピック委員会や、20年の東京五輪・パラリンピック組織委員会のオフィシャルパートナーになっています。豪州、ドイツ、中国のオリンピック委員会ともパートナー契約を結んでいます。

── パートナー契約は高額では。

高岡 米国市場の扉を開けるための費用ととらえています。一方で豪州などはマットレスパッドを現物支給する形なので、当社の費用負担はそれほど大きくありません。

── 今後の展開は。

高岡 最大の目標は米国での販売です。進出にあたり、資金需要が出てきました。株式の上場やマーケティングに強い企業とのアライアンスなども視野に入れています。

(構成=花谷美枝・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 37歳で、父から引き継いだ日本高圧電気の社長に就任しました。

Q 「私を変えた本」は

A デール・カーネギーの『道は開ける』、藤原正彦さんの『国家の品格』。松尾芭蕉『奥の細道』の序文の句「草の戸も住替る代ぞひなの家」は米国で挑戦する今の気持ちと通じるものを感じています。

Q 休日の過ごし方

A 体力維持のためにトレーニングをしています。以前はトライアスロンにも挑戦しました。

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■人物略歴

 ◇たかおか・もとくに

 愛知県出身。東海高校卒業。1983年名古屋大学工学部卒業。98年5月日本高圧電気社長(現任)、2004年11月中部化学機械製作所(現エアウィーヴ)設立、14年9月からエアウィーヴ会長(現任)。55歳。

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事業内容:マットレスパッド・クッション材の製造・販売

本社所在地:東京都中央区

設立:2004年11月

資本金:3000万円

従業員数:約350人(グループ)

業績(2015年度)

 売上高:約120億円

 

(『週刊エコノミスト』2016年7月5日号<6月27日発売>4~5ページより転載)

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この記事の掲載号

定価:670円(税込)

発売日:2016年6月27日

週刊エコノミスト 2016年7月5日特大号

 

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