2016年

7月

05日

【FinTech最前線!】海外の生損保 劇的な変化の時代が来た 2016年7月5日特大号

カーシェアに対応した保険も登場している Bloomberg
カーシェアに対応した保険も登場している Bloomberg

 ◇フィンテックが生死を分ける

青木計憲

(デロイトトーマツコンサルティング執行役員)

 フィンテックによる生命保険・損害保険業界への影響は、バリューチェーンの抜本的な組み替えと、主要なプレーヤーの交代をもたらし、破壊的な変化となる。

 IoT(モノのインターネット)、人工知能、ゲノム解析など、先端技術が急速に普及する中、自動車分野では自動運転技術が進展して交通事故が減少し、医 療分野では病気の予防措置が取られていく。シェアリングエコノミー(共有経済)と呼ばれる、モノを持たない生活様式も定着している。また、1980年代以 降に生まれた「ミレニアル世代」などのデジタル機器が当たり前の世代の価値観はマーケティングや販売チャンネルの形態に影響を及ぼす。


 ◇異業種参入相次ぐ

 こうした社会構造の変化を受けて、海外の保険業界はすでに動き始めている(表)。
 異業種参入では、中国最大のネット小売業アリババと、チャットアプリのテンセントが損害保険会社「衆安保険」を設立した。中国初のネット販売専用損保だ。傷害や旅行、医療などの保険商品を販売している。
  商品・サービスでは、安全運転をすると保険料を割り引く「テレマティクス保険」を大手保険会社が販売している。割引の仕組みで従来の保険料よりも安価にし て、若年層を囲い込むのが狙いだ。ブラジルのポルト・セグーロのほか、独アリアンツも自動車保険ベンチャーの英マーマレードと提携して販売している。保険 契約者には、事故防止のため、eラーニング(情報技術を活用した学習)で安全運転を指南する。
 契約者に対して、保険金以外のサービスを提供する 動きは他にもある。ビッグデータ分析技術を持つ米オスカーヘルス社は、保険商品の加入者に対して、歩数を計測するウエアラブル端末を無料で配っている。加 入者が健康改善目標を達成するとアマゾンのギフトカードを贈る。また、テレビや電話で医師に無料で24時間相談できる仕組みも整えた。無料相談により、契 約者の6割が通院なしで問題を解決している。オスカーヘルス側は、結果的に保険金の支払いを減らせたうえ、保険契約者を1年で3倍に増やしたという。
  販売チャンネルでは、米レモネードなど、ネット上で保険商品を仲介する「ソーシャルブローカー」が出現している。同じ保険商品を求める消費者をネット上で 募り、まとまった人数を確保することで保険会社への交渉力を高め、保険料を割安にさせる仕組みだ。比較サイトも進化している。英ゴー・コンペアーや米ビズ インシュアは、人工知能が商品を提案する「人工知能エージェント」サービスだ。自家用車の市場価格や入手時期などの質問にサイト上で答えると、消費者に適 した自動車保険を提示する。
 また、シェアリングエコノミー時代のいま、加入者同士が保険をシェアする「P2P保険」が世界中で拡大している。独 フレンドシュアランスでは、まずネット上で同じ保険に加入する少人数のグループを作る。保険料は参加者同士でプールし、保険請求が少額の場合はその中から 支払い、超える分は提携する外部の保険会社が払う。この仕組みは、加入者がリスクある行動を控えて保険金支払いが減るなどのコストメリットがある。ドイツ では、90%以上の加入者が......


(『週刊エコノミスト』2016年7月5日特大号<6月27日発売>36~37ページより転載)

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この記事の掲載号

定価:670円(税込)

発売日:2016年6月27日

週刊エコノミスト 2016年7月5日特大号

 

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