2016年

7月

19日

インタビュー:ロバート・ゲラー 東京大学大学院理学系研究科教授 2016年7月19日号

 ◇大震法は利権確保のための茶番劇

    ◇予知前提の法律は撤廃させるべき

 大規模地震対策特別措置法が40年ぶりに見直される可能性が出てきた。対象を東海地域から南海トラフ沿いの地域まで広げる公算が大きい。地震予知を前提とする大震法の問題点を指摘してきたロバートゲラー氏に聞いた。
(聞き手=丸山仁見/酒井雅浩・編集部)

── 大規模地震対策特別措置法(大震法)が見直される可能性がある。これについてどう考えるか。
■大震法は、いわゆる東海地震の直前予知ができることを前提とした法律だ。しかし、政府は地震予知ができないということを認めたくないし、気象庁は予算を失いたくない。有権者やマスコミをけむに巻いて、「見直し」することで、無難に予算措置の延命を図りたいだけだ。
 地震予知の確かな技術が確立できないため、政府も、今やろうとしていることが理不尽だということは分かっている。40年も内容が変わっていない大震法について「見直しした」という結果を残すだけの、霞が関の日常的な茶番劇にすぎない。
 大震法の対象地域の拡大は、中央防災会議や関係都道府県知事の意見を聞いた上で首相が指定する。では、検討する理由は何なのか、という疑問に対する答えを政府は明確にしていない。

── 大震法はどうするべきか。
■撤廃するしかない。地震を予知できず40年たってしまった。政府もできないということを間接的に認めている。ならば廃止するしかない。
 40年前に、一部の研究者が地震を予知できるとうそをついたため大震法が国会で可決された。一日も早く正しい道に戻るべきだ。大震法の廃止は、日本の地震防災対策の再建にも、地震学研究の健全化にも欠かせないステップとなる。地震予知の幻想を諦め、現実路線を歩むべきだ。
── 地震学者からは予知できないという言葉は聞かれないが。
■政府関連の地震学者も「予知は困難である」と言っている。それはできないと認めたに等しい。だが、政府とのつながりのある学者、いわゆる御用学者は、予算を失いたくないので、予知ができないとはっきり言えない。
「困難である」という表現は研究者にふさわしくない。曖昧な言葉で国民をミスリードしてはならない。

 ◇地震は予知できない

── 地震の予知はなぜ現代の科学でもできないのか。
■これは単純な疑問のようで、実は多くの課題を抱えている。地震は自然現象なので、発生理由は自然科学(サイエンス)に基づいて分析する。一方、地震を予知しようとする行為は、基本的に技術(テクノロジー)にあたる。双方は関連するが、異なるものだ。
 技術は、自然について分かっていること(科学的知識)を生かして、現実的な目標を達成することだ。日本の予知計画は、地震発生のメカニズムを理解せずに、予算をつぎ込めば予知できるという子供レベルの発想にすぎない。地震発生のメカニズムを理解して、その上で予知できるか考えることが研究の王道だ。
 現時点では、地震予知が原理的にできないということは証明されていない。しかし、このことは予知研究に多額の予算をつぎ込む理由にはならない。研究者は、予算を申請する際、その研究の科学的根拠を示す義務があるからだ。これまでの予算でどのような研究業績を上げたか、今後の研究に期待される成果は何かを説得力を持って説明するべきだ………

この記事の掲載号

定価:620円(税込)

発売日:2016年7月11日

週刊エコノミスト 2016年7月19日号

 

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