2016年

7月

19日

経営者:編集長インタビュー 大橋徹二 コマツ社長 2016年7月19日号

大橋徹二 コマツ社長

◇「断トツ」の建機サービスを作り上げる

 

 コマツは、油圧ショベルやブルドーザーなど建設機械で国内1位、グローバルでは米キャタピラーに次ぐ2位。ほぼ全世界で事業を展開しているため、「世界経済の景気敏感株」とも言われる。

 2016年度の業績見通しは、新興国経済の減速を受けて、売上高が15年度比9・2%減の1兆6850億円、営業利益は同28・1%減の1500億円とする。

── 現状の世界経済をどう認識していますか。

大橋 今は、世界のマネーが新興国から先進国へ、特に米国に向かっているという認識です。

 建設機械の世界需要を見ると、02年ごろまでは、先進国が6~7割を占めていましたが、03年ごろから新興国ブームが始まり、6割が新興国の需要となりました。リーマン・ショック後には、新興国が7割を占める時もありました。当社の地域別売上高も、14年度は日・米・欧が46%で新興国が54%でしたが、15年度は日米欧が52%で新興国が48%となり、先進国と新興国がひっくり返りました。

 先進国の景気循環は、10年周期とも7年周期とも言われます。今は中国などの新興国の成長鈍化に注目が集まっていますが、新興国もいずれ先進国のような景気循環的な動きをしていくのだと思います。

── 中国経済の行方はどう見ますか。

大橋 目の前の状況が厳しいのは間違いありませんが、悲観はしていません。確かに、石炭やセメント、鉄鋼など、過剰生産状態の産業があるのは事実ですが、すべての会社が同じ事業をしているわけでなく、それぞれで中身はかなり異なります。この違いをしっかり見極めないといけません。

 中国は人口13億人の大国で、今後もそれは変わりません。リーマン・ショック後の政府による4兆元対策で急激に成長した反動で今は落ちています。ただ、今後もインフラや製造業での雇用は必要で、どこかでリバウンド(再成長)すると思っています。

── GPS(全地球測位システム)やセンサーによって車両の稼働状況がリアルタイムで把握できる管理システム「コムトラックス」も、その判断に生かされていますか。

大橋 例えば、04年には、中国政府の政策で建設機械の新車販売が急激に減った時期がありました。ただ、コムトラックスのデータでは、現場での稼働が続いており、実需は減っていませんでした。今も、中国経済のすべてが悪くないというのは確認できています。

── 今年4月には、18年度までの新しい中期経営計画が始まりました。何に注力しますか。

大橋 他社より競争力のある「ダントツ(断トツ)」の商品やサービスを提供し、さらに、お客様の課題解決を提案する「ダントツ」のソリューション(解決法)も提供していきます。我々にとっては、「コマツと付き合っていると仕事がうまくいく」とお客様に言ってもらえるのが一番うれしい。

── 中計では「スマートコンストラクション」の名の下、IoT(モノのインターネット)の活用を掲げています。この進捗(しんちょく)は。

大橋 建設機械などのハードウエアに、センサーやドローン(小型無人機)の活用、図面の3次元化などIoT技術を活用していきます。

 この3年間、IT技術を活用した「情報化施工」に対応する機械を約1000の現場で使いました。人工衛星からの情報で、経度・緯度、高さなどを正確に取得したり、設計通りに土を削れるため、「これまでにない効率的な機械だ」という評価もあります。ただし、施工の作業工程で生産性が上がることは確認できましたが、測量や検査などの工程も同時に生産性を上げないといけません。そこが課題です。

── 自動運転の取り組みはどうでしょうか。

大橋 完全無人運転のダンプトラックが約90台稼働しています。08年より少量で販売し、現在は主に新興国(チリや豪州など)の鉱山で動いています。次の成長分野と位置づけています。

 

 ◇半導体装置も好調

 

── 建設機械と建設車両以外で、好調の事業はありますか。

大橋 当社は、実は産業機械や工作機械でも世界トップクラスの製品群を持っています。自動車向けの大型プレス機、自動車エンジン関連の工作機械などがそうです。当社が発祥した時の事業がプレス機で、今も大事にしています。

 また、最近では、半導体を作る際に必要な「レーザー光源発生装置」が好調です。これを(11年に買収した)子会社のギガフォトンが世界で展開、トップを走っています。建機だけでなく他の製品も、世界1位、2位のトップクラスです。

── キャタピラーとはどう競争しますか。

大橋 競争は、競合メーカーを見るのではなく、お客様を見てするもの、という考えです。この意識で価値を訴求していきます。ものづくりへのこだわりを持って、コマツの機械というより、コマツという会社をお客様に選んでもらえるように取り組みます。お客様にとって、なくてはならない存在になることを目指していきます。

 

Interviewer=金山隆一・本誌編集長 構成=谷口健・編集部

 

■横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 英米で現地生産の準備のために奔走していました。特に英国では、拠点をどこに作るかという場所探しの段階から取り組んでいましたので、印象的です。

Q 「私を変えた本」は

A 塩野七生の本が好きで、『ローマ人の物語』はずっと読んでいます。あと、学生時代に読んだ『成長の限界―ローマ・クラブ「人類の危機」レポート』は勉強になりました。

Q 休日の過ごし方

A のんびりしたり、本を読んだり、ゴルフやジムに行ったりします。

 

………………………………………………………………………………………………………

 

■人物略歴

おおはし・てつじ

 千葉県生まれ。東京・麻布高校、東京大学工学部卒。1977年4月、小松製作所(現・コマツ)入社。2007年、執行役員。常務、専務を経て、13年4月に社長兼CEO(最高経営責任者)。62歳。

 

………………………………………………………………………………………………………

 

■企業データ

事業内容:建設機械・車両、産業機械などを生産、販売

本社所在地:東京都港区

設立:1921年5月

資本金:678億円

従業員数:4万7017人

業績(2015年度)

 売上高:1兆8549億円

 営業利益:2085億円

 

この記事の掲載号

定価:620円(税込)

発売日:2016年7月11日

週刊エコノミスト 2016年7月19日号

 

特集:がんは薬で治る

 

がん免疫療法薬ブーム第二幕

難治性の乳がんに光明

高額薬品が壊す国民皆保険

 インタビュー  本庶 佑 / 国頭  英夫

 

 

                                 アマゾン / 楽天ブックス

                                 ホンヤクラブ / e-hon