2016年

9月

06日

【マーケット怪奇現象】怪奇現象⑧ J-REIT 2016年9月6日号

◇賃料上昇なき分配金の増加

 

堀明希子

(三井住友トラスト基礎研究所主任研究員)

 

 リーマン・ショック(2008年)後の下落から、大きく回復を遂げたJ-REIT(不動産投資信託)市場。昨年1月には一時2000ポイントを突破し、7年ぶりの高値をつけた。その後の中国株式市場の大幅下落(チャイナ・ショック)で1500ポイント近辺まで下落したが、現在は1800ポイント台前半で推移する。こうした相場の押し上げには日銀の金融緩和が大きく影響しているが、J-REITが保有する不動産で肝心の賃料がなかなか期待通りに上昇してこない状況が続いている。

 日銀は金融緩和の一環として10年10月、初めてJ-REITの買い入れを決定。13年4月には異次元緩和に伴い年間300億円の買い入れを決め、14年10月の追加緩和では年間900億円へと拡大した。さらに、昨年12月には異次元緩和の「補完措置」として、個別銘柄の買い入れ上限を発行済み投資口数の5%以内から10%以内へと引き上げた。日銀の大量保有報告書によれば、今年7月末現在でJ-REIT全55銘柄のうち、14銘柄で5%超の“大株主”となっている(表)。

 こうした金融緩和の影響で、J-REITの分配金は着実に増加している。その増加は昨年までの年5%前後から今年に入りペースアップしている。低金利の恩恵で支払利息が減少したほか、J-REIT相場の上昇によって1口当たり純資産額を上回る発行価格での増資が可能になり、「プレミアム増資効果」(調達金額当たりの発行口数を少なくすることで、1口当たりの分配金を高める効果)が働いたためだ。

 日銀の今年1月のマイナス金利導入で、J-REITの借入利率はさらに低下している。J-REITが今年2月以降に調達した有利子負債の平均利率は0.4%(平均調達年限5.1年)と、有利子負債全体の平均利率0.9%(平均残存年限3.9年)を大きく下回る。低い金利で順次借り換えしていけば、支払利息はさらに減少するため、分配金にプラスに寄与していく見通しだ。

 

 ◇国債との利回り差拡大

 

 一方、J-REITの保有不動産は稼働率がすでに高い水準ながら、賃料単価の上昇は極めて緩やかなペースにとどまる。