2016年

10月

11日

第二特集:韓国の騒動 2016年10月11日特大号

世界各地で荷揚げできずに物流が滞った・・・ Bloomberg
世界各地で荷揚げできずに物流が滞った・・・ Bloomberg

 ◇韓進海運の破綻で混沌

 ◇世界の物流に及ぶ余波

 

桐山友一(編集部)

金志敏(ジャーナリスト)

 

 世界7位(表)のコンテナ船貨物の輸送規模を持つ韓国海運最大手、韓進(ハンジン)海運が破綻した。これほど規模の大きな海運会社の破綻は世界で初めてで、世界の物流や韓国経済に計り知れない影響を及ぼしている。
「心より謝罪いたします」──。
 韓進海運の崔恩瑛(チェウンヨン)元会長(54)はそう言うと突然、土下座を始めた。9月27日に開かれた韓国国会の海洋分野を担当する委員会。崔氏は国会議員による国政監査の一環で証人として呼ばれ、質問した国会議員から「(破綻に対して)心のこもった謝罪がない」と追及された直後だった。崔氏はまた、「どんな最高経営責任者も、自分の会社を倒産させても(何も)行動をしない」と指摘され、数分間すすり泣きを続けた場面もあった。

 日本の会社更生法に相当する「法定管理」を8月31日、ソウル中央地裁に申請した韓進海運。2014年まで韓進海運会長を務めた崔氏が、ここまで追及されてしまうのには理由がある。韓進海運や大韓航空などからなる韓進グループを築き上げた創業者、趙重勲(チョジュンフン)氏が02年に死去。韓進海運は三男の趙秀鎬(チョスホ)氏が会長となって経営を引き継いだが、秀鎬氏も06年に病死してしまう。そこで、翌07年に後継の会長に就いたのが、秀鎬氏の妻の崔氏だった。

 ◇ロッテ創業者のめい

 崔氏はロッテグループ創業者である重光武雄氏(韓国名・辛格浩(シンギョクホ))のめい。しかし、それまで会社経営の経験がなく、海運関係者は「素人も同然だった」と指摘する。さらに、08年にはリーマン・ショックが発生し、世界経済が大停滞に陥る。海運業界でも船腹過剰が顕著になり、世界の海運大手がコンテナ船の削減や大型化によるコスト引き下げに取り組む中、経営判断の遅れが傷口を拡大。韓進海運は13年まで3年連続で営業赤字を計上し、崔氏は責任を取る形で退任した。その後、趙重勲氏の長男の趙亮鎬(チョヤンホ)・韓進グループ会長が支援に乗り出す。グループ中核の大韓航空など系列会社を通じて1兆ウォン(約900億円)を投じたものの、“焼け石に水”でしかなかった。また、大韓航空自身もウォン安・ドル高に伴うドル建て債務の拡大に加え、趙亮鎬氏の長女の大韓航空副社長(当時)が14年末、客室乗務員に暴言を吐いて離陸を遅らせた「ナッツリターン」事件によるイメージ低下などもあり経営が悪化。支援の余裕を失っていく。
 今年3月には同じく経営危機に陥っていた、韓国海運2位の現代商船が銀行管理下に入った。趙亮鎬会長も韓進グループによる自主的な再建をあきらめ、今年4月に銀行管理が決定。銀行団はその後、韓進グループに対し、再建計画の策定と1兆2000億ウォン(約1080億円)の資金調達を要求したが、韓進グループ側が調達できる見込みは5600億ウォン程度と半分に満たない。銀行団は8月30日、再建計画を承認せず、もはや法的整理の申請しか道はなくなった。……