2016年

10月

11日

【踊る経済統計】プロの視点 個人消費 2016年10月11日特大号

 ◇“濡れ衣”だった家計調査

 ◇ブレる性質の理解が重要

 

宇南山卓

(一橋大学経済研究所准教授)

 

 2014年4月の消費税率の引き上げ後、消費の動向の把握方法が論争の的となっている。きっかけは、消費の主要な統計である総務省の家計調査が消費増税後に消費が低迷していることを示したのに対し、小売店などの販売動向を表す経済産業省の商業動態統計が順調な回復を示したためである。各方面から家計調査の信頼性を疑う声が出て、消費の把握方法が論点となった。

 消費は、他の経済活動と比べて正確に把握するのが困難な経済活動である。生産や投資など企業が決定する経済活動であれば、一部の大企業の動向を把握するだけでも、かなり正確に全体の動向を推測できる。しかし、消費は、日ごろは必ずしも帳簿をつけない国内5000万世帯もの家計がバラバラに決定するものであり、統計的な手法を駆使して把握するしかない。家計調査では、約9000世帯を無作為抽出し、毎月の支出の記録を依頼している。

 毎日の支出を厳密に調査しているが、むしろそれが消費の不規則な動きを発生させる。たとえば、月末が週末にかかると携帯電話料金の支払いが翌月になり、見かけ上の支出額は大きく変動する。こうしたブレが景気動向とは無関係に発生し、必ずしも原因は特定できないため、統計の信頼性に問題があるように見られやすい。

 今回のケースでは、図のような14年4月の消費増税後の家計調査と商業動態統計の動向の不一致が、政策担当者や多くのエコノミストを悩ませた。家計調査は「世帯がどれだけモノを買ったか」の、商業動態統計は「小売店がどれだけモノを売ったか」の指標であり、両者は類似した動きをすると考えられる。また、増税後の夏にかけては雇用環境の改善が進み、株価も堅調に推移していた。その中で、家計調査が示した消費の低迷は、例外的に景気回復の遅れを示唆したため、「景気判断を混乱させる元凶」と印象付けられた。

 

 ◇“爆買い”は含まれず

 

 だが、14年秋ごろまでに、家計調査がおおむね実態を示していたことが判明する。経済全体を包括的に捉えた内閣府の国民経済計算(SNA)でも、家計消費がやはり低迷していたからである。SNAは家計調査を含めさまざまな統計に基づき作成されることから、信頼性が高い。しかし、………